By Jamie McGeever
[オーランド(米フロリダ州)17日 ロイター] - 「脱ドル」とドル建て資産に対する世界の投資意欲が話題になる中で、外国投資家の主要な集団の一つである中央銀行が米国債から静かに手を引いているようだ。
ニューヨーク連銀が発表している「預かり資産」の最新データを見ると、外国の中銀が保有する米国債や他の米国証券の額は着実に減少している。
米国資産に対する外国の需要を測る方法は多くあるが、それらはしばしば相反するシグナルを発する。さらに、米財務省国際資本(TIC)の統計や、国際通貨基金(IMF)の公的外貨準備の通貨別構成(COFER)データのような最も広範で正確な指標は発表まで2カ月以上の長いタイムラグがある。
ニューヨーク連銀はデータを週次で発表しており、これは中銀の資産動向を示す指標としては限りなく「リアルタイム」だ。
ニューヨーク連銀が先週発表したデータによると、外国の中銀がニューヨーク連銀に預ける米国債は約2兆8800億ドルと、1月以来、約5カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。前週より171億ドル減り、減少額としても1月以来の大きさだった。
住宅ローン担保証券(MBS)や政府系金融機関債券などを含めたニューヨーク連銀による外国中銀の米国預かり資産は先週で総額3兆2200億ドルと、2017年以来の低水準となった。
この数値は4月2日にトランプ米大統領が貿易相手国への関税引き上げを発表した「解放の日」の騒動が起きる直前の3月以来、約900億ドル減った。減少分の半分超は国債が要因だ。
これらの動きがより広範な傾向を示しているのであれば、外貨準備の運用責任者は保有資産全体に占める割合と、名目ベースの両方で米国債へのエクスポージャーを減らしていることになる。
中銀のドル建て資産の正確な構成を把握することは容易ではない。中銀のドル建て資産は数兆ドル規模相当に達し、複数のセクターや管轄地域、大陸にまたがる。中銀の統計の切り口が異なれば、異なるストーリーが語られるのはこのためだ。
例えば最新のTIC統計によると、外国人の米国債保有残高は3月に増加して過去最高の9兆0500億ドルを記録し、公的部門の保有残高も増えた。公的部門が保有する国債は4兆ドル弱に達し、外国からのエクスポージャー全体の約45%を占めた。
しかし、これらの数字は3カ月前のものであり、ここ数カ月間の流通市場と入札における外国人の米国債需要は公的部門ではなく、民間機関がけん引している。
オフショア口座に保管されている「隠れた」外貨準備も数兆ドル規模に上る可能性がある。これらは政府系ファンドのような準公的機関や、中国の場合は国有銀行が管轄している。
米銀行大手バンク・オブ・アメリカの米国金利戦略担当ディレクター、メーガン・スウィバー氏は16日付のリポートで、外国からの預かり資産の減少は警告のサインであり、特に外国人による米連邦準備理事会(FRB)のリバースレポ・ファシリティー(RRP)利用も小幅減少している点が要注意だとしている。RRPはFRBの金利調節手段のひとつ。
国債が満期になると、外国の中銀はしばしばRRPに償還金を滞留させる。しかし、スウィバー氏は外国中銀が最近はそうしていないとし、国債保有残高もFRBに翌日物で預けている現金残高も減少していると話す。
スウィバー氏は、ドルが下落している時に外貨準備の運用元が米国債の保有を減らすのは「異例」だとして「この資金フローは、公的部門が保有資産をドルから分散していることを反映している公算が大きい」と指摘した。
28兆5000億ドル相当に達する米国債市場は深く、流動性があり、中銀は依然として重要な参加者である。元来、中銀は慎重で注意深い性格を持つため、保有比率の変更は緩やかになるだろう。
しかしながら、毎週発表されている預かり資産のデータは、一部の中銀が既にその動きを始めている可能性を示唆している。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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