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COLUMN-債券市場は先進国の財政悪化が圧力に、当面逆風継続か

ロイターFeb 12, 2026 4:12 AM

Jamie McGeever

- 世界経済は奇妙な局面を迎えており、今の状況は債券市場にとって今後数年が厳しいものになることを示唆している。

財政状況は先進国全体で急速かつ一様に悪化しているが、過去20年間に見られた大規模な政府支出が行われた局面と異なり、今回は数兆ドル規模の世界的金融危機やパンデミックは起きていない。

それどころか、成長は堅調な様子だし、人工知能(AI)を巡る激しい競争に後押しされた前例のない民間設備投資ブームが進行中であり、株式市場は過去最高値にある。そしてこれら全ての動きは明らかに相互に影響し合っている。

各国政府が財政のひもを緩めているのは、世界の新たな現実に適応しようとしているためだ。つまり、グローバル化はほころびつつあり―死につつあると言う人もいる―代わりに分断や孤立主義、地政学的緊張の高まりが台頭している。

防衛、エネルギー、資源の安全保障、技術革新への支出を拡大するという約束―さらには生活費高騰の問題で有権者を支援するとの公約は、コロナ禍から完全には回復していない公的財政に巨大な負担をかけかねない。

米国ではトランプ大統領が国防予算を50%増の1兆5000億ドルに引き上げるよう求めており、既に対国内総生産(GDP)比6%前後で推移している財政赤字が大幅に膨らみそうだ。一方、ドイツは「債務ブレーキ」を撤廃し、防衛やその他支出のための今年の新規借り入れが2000億ユーロ近くに達する見込みとなっている。

そして日本もこうした流れに乗っている。8日の総選挙で地滑り的勝利を収めた自由民主党の高市早苗首相は、日本経済の強化に加え、軍事およびエネルギー安全保障を強化するため、大規模な支出増と減税を約束している。こうした政策の進めるための1170億ドル規模の大型補正予算は、その大部分が新規国債発行で賄われる。

債務残高、財政赤字、そしてイールドカーブが世界中で上昇する中、市場では不安の高まりとともに「消化不良」が生じる可能性があり、債券投資家はこれほど大量の債券を吸収するために、ますます高い利回りを要求するかもしれない。

<乏しい財政再建の可能性>

重要なのは、中央銀行がもはや穴埋め役を担うとは期待できないことだ。トランプ氏が次期連邦準備理事会(FRB)議長に指名したケビン・ウォーシュ元理事は、FRBはバランスシートを縮小すべきだと主張している。イングランド銀行(英中銀)や欧州中央銀行(ECB)も同様にバランスシートを縮小している。日銀でさえ2024年以降、国債購入を縮小しており、利回り急騰の際には高市政権の救済に積極的ではない可能性がある。

各国政府は短期証券の発行を増やし、債務の平均償還期間を短縮することで負担を和らげようとしている。こうした政策は、借入コストを抑え、投資家の「デュレーションリスク」(平均償還期間の長い債券ほど市場金利の変動に敏感に反応すること)を抑えるのに役立つが、一方で満期を迎える債務を定期的に借り換える「ロールオーバー」のリスクを高めてしまう。

期待されるのは、追加借り入れが成長を十分に促し、債務のGDP比を安定させ、債務を持続可能なものにすること。なぜなら、財政規律が近く回復するようには見えないからだ。

HSBCのアナリストチームは先週、「名目成長率の上昇が所得と税収の増加をもたらさない限り―これはAI投資や生産性そのものだけでは不十分かもしれないのだが―一部の国は厳しい財政再建の課題に直面する可能性がある」と記した。

必要となる財政再建の規模は大きい。HSBCの推計によると、現在の借入コスト水準で債務のGDP比を安定させるのに必要な財政調整の規模は、米国ではGDP比4%超に達し、フランスは3%、英国とドイツは2%だ。

この規模の財政再建が実行されるのはまれだ。主要先進国では1990年以降に5年間でGDP比4%超の財政調整が行われたのはわずか8回で、3%超も15回にすぎない。

今進んでいる財政拡張によって最終的に通貨価値の下落やハイパーインフレ、債券市場の暴落などが起きるかどうかは別の議論だ。しかし、たとえこうした破滅的シナリオが現実のものにならないとしても、債券市場が今後圧力を受けると想定してよさそうだ。

これら全てを踏まえると、分断が進む今の世界では、「株式60%/債券40%」という伝統的ポートフォリオのうち、債券の40%部分がいっそう脆弱に見えてくる。投資とは常に相対的な判断だが、債券市場の投資家にとっては「結局、どれがまだ一番マシな選択肢なのか」という問いがますます切実になっていくのかもしれない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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