
Karen Kwok
[ロンドン 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ソフトバンクグループ9984.Tの孫正義会長兼社長にとって、リスクとは技術投資を巡る不運な副産物ではない。それは主要な特性なのだ。孫氏はサム・アルトマン氏が率いるオープンAIに対する投資を拡大することで、この考え方をさらに推し進めようとしている。
ロイターは今週、ソフトバンクが昨年、オープンAIに300億ドルを出資したのに続き、再び同額の300億ドルの追加投資を現在検討していると報じた。
マイクロソフトMSFT.O、エヌビディアNVDA.O、アマゾンAMZN.O、セコイア・キャピタルのような主要企業は複数の人工知能(AI)研究所と提携関係を結びリスクをある程度分散しているように見える。孫氏の特異な行動は既に財務的に余裕のない計画に対する資金投入を強化することになる。
孫氏の投資手法は長い間、カリスマ性のある創業者に多額の資金を提供し、大きな目標を追求させてきた。アリババ9988.HKのジャック・マー氏のようにうまくいく場合もあれば、ウィーワークのアダム・ニューマン氏のようにそうでないこともある。
アルトマン氏が成功する可能性があると考えるだけの理由はいくつかある。オープンAIの成長度合いは前例のないほど著しいように思われ、チャットGPTの週間ユーザー数が昨年12月時点で9億人に達した。12月の年換算収益は約200億ドルに上るとオープンAIのサラ・フライヤー最高財務責任者(CFO)は最近語った。しかし、収益化はまだ先の話であり、アンソロピックやイーロン・マスク氏のxAI、アルファベット 9988.HKのジェミニのような競合企業と競争が激しくなっている。
こうしたAI研究所の間の技術競争は孫氏の戦略が示唆するほど差がない。広く注目されているチャットボットアリーナのランキングは、オープンAIが推論能力で首位となっているが、アンソロピックが開発したクロードやジェミニはコーディング、速さ、柔軟性といった他の分野でより高い評価を得ている。
ビッグテックが複数の企業を支援するのはこのためなのかもしれない。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、オープンAIと長年提携してきたマイクロソフトはエヌビディアとともにアンソロピックに総額で最大150億ドルを投資する予定。既にオープンAIとxAIに投資しているセコイア・キャピタルもアンソロピックに出資する可能性があるという。アマゾンも投資を分散させているようだ。こうした動きと対照的に、ソフトバンクはオープンAIに集中しており、パープレキシティやプールサイドのような企業に対する関心はオープンAIに比べて小さい。ソフトバンクはオープンAIに投資する資金を捻出するためにエヌビディア株を売却しさえした。
危険なのは言うまでもなく、オープンAIが勝てない場合だ。孫氏はなぜアルトマン氏とチャットGPTがそれほど特別だと考えるのか。強みの一つはオープンAIが利用者数の点で追い付かれにくい段階まで達し、競合他社よりも効果的にその他の製品を開発できるかもしれないことだ。もう一つは、豊富な資金力と企業顧客の基盤を持つマイクロソフトがキングメーカーのような立場にあり、両社の関係が深く絡み合っているだけにオープンAIを失敗させられないという点だ。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が率いるマイクロソフトは期待外れの決算を受けて29日に株価が11%下落し、AI事業にどれほど頼っているのかが示された。
ソフトバンクの資金力はいずれにせよ無限ではない。ソフトバンクの借入比率は直近の四半期決算の時点で16.5%に達しており、上限としている25%に近づいている。クレジットサイツのアナリストは資産担保証券やマージンローンを考慮すると、実際の比率がさらに高くなる可能性があると指摘している。
つまり、次の300億ドルを調達するのは大変かもしれない。一つの可能性として、孫氏は自身が最も大切にしている半導体資産のアーム株を売却しなければならないかもしれない。そうすれば現金が手に入るが、ソフトバンクはAI戦略をオープンAIにさらに依存することになるだろう。
●背景となるニュース
*ロイターは27日、事情に詳しい関係者の話として、ソフトバンクグループがオープンAIに300億ドル程度追加投資することを協議していると報じた。この新たな投資はオープンAIが最大1000億ドルの資金調達を目指すラウンドの一部となる可能性があり、同社の評価額は約8300億ドルに達するという。nL6N3YT02A
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)