tradingkey.logo
tradingkey.logo

COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕中南米巡るトランプ氏の覇権主義、パナマ運河が次の火種か

ロイターJan 19, 2026 2:24 AM

Sebastian Pellejero

- トランプ米大統領は2期目の就任早々からパナマ運河に対する米国の支配力拡大を要求していた。つまりベネズエラへの軍事攻撃を実施したり、デンマーク自治領グリーンランド領有を巡って欧州にけんか腰の態度を再び見せたりするずっと前から、パナマ運河を米国の管理下に置く計画を胸に抱いていたのだ。こうした米国の覇権主義的姿勢に加えて、中南米諸国と中国の貿易関係を巡る懸念が高まる中で、パナマ運河という主要インフラを巡る協議の停滞が、次の地政学的な火種となるかもしれない。

パナマ運河の戦略的な重要性は極めて大きい。毎年の通航船舶の規模は世界の海上貿易の約5%に相当し、船舶の大半は米国発か米国行きだ。しかし積み荷のおよそ2割を占めるのは中国で、パナマにとっても中国は2番目に大きな輸入先となっている。中国企業は相次いでパナマの物流拠点に進出してきたが、恐らく最も重要な存在は香港複合企業CKハチソン(長江和記)だろう。同社は1990年代から運河の太平洋岸のバルボア港と大西洋側のクリストバル港の運営している。

トランプ氏がパナマ運河を中国が「運営している」と主張して米国の手に「取り戻す」と約束し、パナマ当局がCKハチソンの契約を詳しく調べ始めると、同社は2025年3月にパナマを含めた港湾運営権を米ブラックロックが主導する共同事業体に230億ドルで売却する取り決めを結んだ。ただそれ以来、この取引は地政学的な綱引きに翻弄され続けている。中国国営メディアはCKハチソンによる権益売却を批判し、中国国有の中国遠洋海運集団(COSCO)が権益の過半数持ち分を要求している、とブルームバーグが伝えた。

一方、パナマの最高裁判所はCKハチソンの港湾運営権全体の無効化を求める訴訟について判決を下す準備を進めており、いかなる結果が出ても同国には即座に影響が及ぶ。米国は地政学的に「どっちつかず」の態度に対して敵対姿勢を強めるばかりだが、中国を排除すればそれ自体が反発を招きかねない。パナマは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱し、米国との軍事協力を深化させている。問題は、この道筋を進むことでパナマの行動の自由が制約されてしまうことにある。パナマ運河庁のバスケス長官は25年6月、ブラックロックによる取引が運河の中立性を危うくする可能性があると警告した。

それでも米国が矛を収める公算は乏しい。与党共和党の政治家たちは、パナマは米国との間で調印した中立条約に違反した状態にあるのではないかと主張。トランプ政権は米州に全体おける米国の優越的地位を拡大する路線を突き進んでいる。

24年に中国と中南米・カリブ地域の貿易学が5150億ドルに達したことを踏まえると、同地域の他の国も米国から同じような圧力を近く感じてもおかしくない。戦略国際問題研究所(CSIS)の試算では、中国企業は現在同地域の港湾の3分の1を支配または運営するとされる。米国がベネズエラに介入し、その後キューバやコロンビアといった中南米諸国に強い警告を発したことに伴い、地政学的な包囲網は狭まり続けている。

●背景となるニュース

*パナマの最高裁判所は、CKハチソンがパナマ運河の港湾を運営する契約を無効とするよう申し立てた会計検査院の訴訟について審理を進めている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

関連記事

Tradingkey
KeyAI