
Jamie McGeever
[オーランド(米フロリダ州)13日 ロイター] - 2025年に金や他の貴金属が目を見張るような価格急騰を記録したため、26年に同じようなリターンをもたらすとは想像しにくい。しかし、中央銀行の堅調な需要と安全資産としての需要が、止まらない価格上昇をさらに押し上げる可能性がある。
年明けからわずか半月足らずで金と銀は既に過去最高値を更新し、26年に入ってからそれぞれ7%、20%上昇している。プラチナも26年に入ってから15%上昇し、最高値に迫っている。
こうした動きは、金が25年に65%上昇し、プラチナが2.25倍、銀が2.45倍に膨らんだことを踏まえると、なおさら注目に値する。
投資家が利益を確定させ、一息つくという考え方は、トランプ米大統領が相次いで繰り出す政治、経済、地政学的なニュースの嵐によって一掃された。レーニンの言葉である「何も起こらない数十年があり、数十年が起こる数週間がある」を思い起こさせる。
先週だけでも、トランプ氏は2000億ドル相当の住宅ローン担保証券(MBS)を購入するように命じ、米石油大手にベネズエラでの活動を指示し、防衛企業の自社株買いと配当の支払いを禁止しようとし、クレジットカードの金利に1年間の上限金利を設定すると表明し、トランプ政権下の司法省はジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長を刑事訴追すると脅した。
これらは全て金価格にとって追い風の材料となる。ドルが数カ月間にわたって驚くほど安定しているのを踏まえると「ドル安取引」は誇張されているかもしれないが、金や他の貴金属の好調さはこうした動きに一定の根拠があることを示唆している。
個人投資家による「安全資産への逃避」とインフレへのヘッジは、中央銀行の金地金に対する極めて非弾力的な需要を補完している。中銀の準備資産運用担当者は、価格に関わらず戦略的理由と分散投資のために金の買い付けを続けている。
<ペダルを踏み込んで金へ>
この現象を追うには、中国に注目すべきだ。中国人民銀行(中央銀行)が先週発表したデータによると、人民銀は2025年12月に1年2カ月連続で金を購入し、保有量は前年同月より約28.5トン増えた。
購入量は24年の44トンには及ばないものの、現物の金価格の年間上昇率が1979年以来の高水準を記録した中では相当な規模だ。これにより、中国の25年末時点の金準備高は3194億5000万ドル相当となり、前年末時点の1913億4000万ドルから増えた。
他の中銀も金を買い増している。国際通貨基金(IMF)のデータによると、昨年終盤の購入量ではブラジルとフィンランド、トルコなどが最大級となり、公的部門の買い付けは長期平均を上回った。
ドイツ銀行のアナリストらは12日、「高騰した金価格がまだ準備資産運用担当者の金買い増し意欲を損なっていないのは明らかだ」と指摘した。
ステート・ストリートのアナリストらも同意見だ。公的部門の買いは「粘り強い」需要源となっており、公的部門の準備金管理が米国債から金へと「持続的なシフト」を遂げていることを強調しているとした。
これによって金価格の下限が実質的に引き上げられており、ステート・ストリートは1オンス当たり4000ドルと推定している。これは12日に付けた過去最高値の4630ドルを若干下回る水準だ。上限も上昇しており、5000ドルを試す展開が現実味を帯びてきている。
<金の方向性に疑いの余地はない>
金は、外貨準備の世界基準となっているIMFの「公的外貨準備の通貨別構成(COFER)」調査には含まれていない。代わりに、中銀資産のより広範な指標に計上されている。
この理由や、データ報告の透明性などの要因を踏まえると、通貨や米国債などの他の資産と比較した公的準備資産での金の位置付けの推定に相当の注意を払う必要がある。
国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、昨年10月の世界の外貨準備に占める金の割合は25.9%だった。これはIMFのCOFER調査で20%のシェアを握るユーロと比較される。また、一部のアナリストは25年の金の準備資産に占めるシェアが1996年以来、29年ぶりに米国債のシェアを上回ったと確信している。
これらの指摘の正確性はともかくとして、中銀の進む方向性については疑いの余地が少ない。そして、より振幅が激しい世界で、中銀が近い将来に方針転換することはないだろう。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)