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COLUMN-トランプ氏のベネズエラ攻撃、ペトロダラー再生も狙いか

ロイターJan 7, 2026 2:21 AM

Jamie McGeever

- 米国によるベネズエラのマドゥロ大統領拘束には多くの動機がありそうだが、あまり語られていない要因の1つとして、「ペトロダラー(オイルマネー)」の世界的地位低下を巡るホワイトハウスの懸念が挙げられるかもしれない。

ベネズエラの原油生産は現在、日量100万バレル程度と低水準だが、原油埋蔵量は約3000億バレルと世界全体の17%を占め、世界最大と伝えられている。

トランプ米大統領は、米国がこの莫大な埋蔵資産を開発することに関心があると明言。米エネルギー大手に、衰退するベネズエラの石油産業を再活性化させる計画を口にしている。

 ただ、ベネズエラの将来の石油生産を全て米国が確保すれば、その影響はエネルギー市場だけにとどまらないかもしれない。新たに多大なペトロダラーが生み出されるからだ。ペトロダラーは米国による世界金融システム支配を支える道具として長年機能してきた。

<ペトロダラーの興亡>

ペトロダラーという用語は、1970年代半ばに米国とサウジアラビアが世界の石油取引を米ドル建てで行うことで合意した際に生まれた。これによりドルへの新たな需要が生まれ、米国の戦略的、経済的、政治的な影響力が確固たるものとなった。

2002年から08年半ばにかけて原油価格が1バレル=150ドル近くまで上昇した時期に、ペトロダラーのパワーはピークを迎えた可能性がある。

当時、米国は世界最大の原油輸入国であり、産油国は莫大な貿易黒字を蓄え、その多くが巨大な米国債市場に還流していた。これにより米国、ひいては世界の債券利回りと金利に下押し圧力がかかった。

26年の状況は大きく異なる。シェールオイル革命のおかげで米国は現在、世界最大の産油国であり、21年以降は石油の純輸出国に転じた。

一方で、サウジアラビアなど多くの産油国は、石油による貿易黒字を、拡大する財政赤字の穴埋めに充てるようになっている。

さらに、中国の経済的台頭や新たな地政学的対立により、ドル建ての石油取引の割合は低下している。公式統計は存在しないが、世界の原油取引の最大20%がユーロや中国人民元など、ドル以外の通貨建てだと推計されている。

ドルと石油の関係も変化している。JPモルガンのアナリストによると、05―13年の期間は、米ドル指数が1%上昇すると北海ブレント油の価格は約3%下落していた。しかし14―22年には、ドルが1%上昇しても北海ブレント油の下落率は0.2%にとどまった。昨年はドルと原油が従来のように逆方向に動くのではなく、ともに下落した。

この結果、産油国による米国債の公式保有額を見ても、世界の資本フローに占める石油収入の割合を見ても、ペトロダラーの力は明白に衰えている。

<トランプ氏の反撃>

これは、過去数十年にわたりドルの国際的地位がゆっくりと、しかし着実に低下してきた状況を反映している。外貨準備に占めるドルの割合は現在、過去25年の最低水準となった。ドルは依然として世界貿易における主要通貨ではあるが、その地位も揺らぎ始めている。

しかし、トランプ政権は反撃に出ている。ホワイトハウスはドル安を望んでいるかもしれないが、一方で世界市場におけるドルの支配的地位を維持したい考えで、最近のベネズエラに対する行動も、そうした大きな取り組みの一環かもしれない。

約1年前に第2次トランプ政権が発足するまで、地政学的要因を背景に外貨準備や決済をドル以外の通貨に分散する世界的潮流に、ホワイトハウスは抵抗する意欲をほとんど見せていなかった。

しかしトランプ政権は姿勢を硬化させた。政権はデジタル決済や国際金融の分野でドルの役割を強化するため、ドルに連動したステーブルコインを推進している。また、ドルに代わる通貨を志向する国々、特にBRICS諸国に関税をちらつかせている。

ベネズエラが抱える世界最大の石油資源に一定の影響力を得ることも、こうした取り組みの一環かもしれない。その過程では、マドゥロ政権の同盟国である中国やロシアの力をそぐことにもなる。

アトランティック・カウンシルの客員上級研究員、フン・トラン氏は「ドルは依然として石油市場の基軸通貨であり、米国はその地位を守ろうとしている」と語った。

ウィンチェスター大学の銀行業・経済学教授リチャード・ウェルナー氏も、米国のベネズエラに対する行動の目的は、ペトロダラー体制の強化である可能性が高いと述べている。

しかし同氏は、こうした極端な行動は最終的に「焦り」のサインと受け取られかねないと指摘。BRICS諸国などグローバルサウス諸国が、通貨支配を維持するための米国の武力行使に反発すれば、ペトロダラーの衰退を加速させる可能性もあるとしている。

もちろん、実際にどうなるかはまだ分からない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

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