tradingkey.logo
tradingkey.logo

COLUMN-次期FRB議長、「超ハト派路線」の見方に市場は否定的

ロイターDec 9, 2025 2:10 AM

Jamie McGeever

- 金融の専門家らは、米連邦準備理事会(FRB) の次期議長は超ハト派的でトランプ大統領に忠実な人物であり、経済の基礎的条件を無視してでも金利を引き下げようとする、と確信しているもようだ。しかし市場はそうした見方を受け入れていない。

来年5月に2期8年の任期を終えるパウエル議長の後任として、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長が指名されるとの観測が広がっている。トランプ氏は先週、次期議長候補を1人に絞ったと明かした後、ホワイトハウスのイベントでハセット氏を「FRB議長になる可能性がある」と紹介した。

ハセット氏がトランプ氏の「忠臣」なのは疑いようがない。しかし市場は、ハセット氏が率いるFRBがトランプ氏の示唆するほど大幅な金融緩和には動くとはトレーダーが考えていないことを明確に示している。

実際のところ、金利先物に織り込まれた来年末までの追加利下げ幅は75ベーシスポイント(bp)ほどだ。つまり25bpずつなら3回で、そのうち2回は恐らくパウエル氏の任期中に実施されるので、ハセット氏の下で決定される利下げは来年後半の1回だけという展開になる。

<財政刺激が制約に>

これは2通りの見方ができる。

1つは来年後半に利下げされるリスクの見積もりがあまりにも低く、リスク性資産は現時点で過小評価されているという意見。もう1つは、FRBが来年それほどハト派的にならず、金融政策主導の株価上昇余地とドル下落余地は限られつつあるという考えだ。

全ての要素を考慮すれば、後者が現実化する確率の方が大きいように見える。最近のロイター調査で示された来年末のS&P総合500種の予想中央値も7490で、5日終値からの上昇率は9%に過ぎない。

次期FRB議長が受け継ぐ経済物価情勢を考えれば、来年中の利下げ幅は限定的だとの予想が理にかなっている。

確かに米国の労働市場は弱くなってきたが、物価上昇率はFRBが目標とする2%を5年近く上回り続けている。

また市場の予想が正しいとすれば、次期議長就任時にFRBは既に100bp、すなわち今年これまでで2回と今週の1回、そして来年前半の1回の利下げを終えている。しかもFRBは昨年も9月と12月に計100bp利下げしていた。

そうなると政策金利水準は3.25─3.50%に低下し、引き締め的と見なす専門家がほとんどいなくなる水準に達する。それどころか、物価上昇率がなお3%前後で推移する中で、次期議長就任時の実質金利はゼロ付近になってもおかしくない。

さらに来年は、トランプ氏が成立させた大型減税法と、全世帯に関税を原資とする2000ドルが給付される可能性を通じて、財政面から景気が刺激される。

このような状況で、金融政策において実際どれだけの追加緩和が可能だろうか。

<難しくなる合意形成>

次期議長は、足元で異例なほどメンバーの意見が分裂した状態にある連邦公開市場委員会(FOMC)で合意を形成するという難題も待ち受ける。来年は、こうした分裂に拍車がかかる恐れもある。

FOMCを次期議長がハト派方向に傾けようとするのはほぼ間違いないが、その「抵抗勢力」が立ちはだかるだろう。クリーブランド地区連銀のハマック総裁とダラス地区連銀のローガン総裁は、19人のFOMCメンバーのうち最もタカ派色が強く、2人とも来年投票権を持つ。

もちろんFOMCの決定に反対票が投じられるのは珍しくない。反対票はパウエル氏の下で5回に1回、イエレン前議長時代にはほぼ半数の会合、バーナンキ元議長時代は全体の6割以上の会合で見られたことがセントルイス地区連銀のデータベースで分かる。

しかしこれらの大半は1票だった。今年10月のFOMCで25bpの利下げが決まった際には一方で利上げ、もう一方でより大幅な利下げと相反する方向で2票の反対があったが、そうした事態は1990年以降で3回しかない。また今年は既に、過去30年で最も反対票が多くなっている。

今や賛成7、反対5といったイングランド銀行(英中央銀行)と似たような政策決定の構図がFRBにも出現する可能性がある。こうした意見対立によって、次期議長がどれほど懸命に推進しようとしても、いかなる政策措置を実行するにも骨が折れるだろう。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

関連記事

KeyAI