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COLUMN-海外勢の米国株投資意欲は健在、資金流入が再加速

ロイターDec 3, 2025 2:18 AM

Jamie McGeever

- 今年は欧州とアジアの主要株式市場の多くが米株式市場をアウトパフォームしたため、外国人投資家が米国株に見切りをつけつつあるように見えるかもしれない。

しかし実際には違う。海外民間部門から米国株への資金流入は過去最高水準で推移しており、しかも流入のペースはこの数カ月で再び加速している。今の大きな問いは、この流れが来年も続くかどうかだ。

公表が遅れるものの、海外の米国資産への投資需要を測る代表的な統計である米財務省の国際証券投資統計(TICデータ)の直近の数値によると、海外民間投資家による9月までの12カ月間の米国株への純資金流入は6467億ドルに上った。

実際のところ、TICデータによると、海外からの米国株への資金流入は今年、ほぼ毎月のように過去最高を更新しており、1月には前回ピークである2021年の3920億ドルを突破した。

<資金流入が再加速>

海外民間投資家による米国株投資の12カ月間移動平均は、24年の米大統領選挙前後の強い資金流入で部分的に押し上げられている。月間の純流入額が1000億ドルを超えることはまれだが、昨年の9月と11月には、次期トランプ政権が景気を露骨に押し上げる「市場寄り」の減税・規制緩和政策を追求すると見た投資家が株を買い漁ったため、この水準を超えた。

しかし、こうした強気な楽観ムードの第1波は今年初めにいったん消え去り、トランプ氏の関税政策や保護主義的な通商政策を巡る不安が取って代わった。

それでも海外投資家の米国株需要は冷え込みが長続きせず、人工知能(AI)ブームに乗って再び急回復。過去5カ月のうち3カ月で海外からの純流入額は1000億ドルを超え、900億ドルを超えた月が1回あった。

海外投資家による米国株への純資金流入は9月までの1年間で約6500億に達しており、これは同期間の米国資産全体への純流入額、1兆5900億ドルの約40%に相当する。同期間における単一の米資産種別に対する海外からの資金流入では最大であり、米国株以外の流入額は米国債が4930億ドル、社債が3190億ドル、政府機関債が1275億ドルだった。

<ドル安が米国外のリターン押し上げ>

ある面で、海外から米国への資金流入は驚くべきことではない。今年は世界中がこぞって米国主導のAIブームに乗ろうとしているからだ。

しかし資本フローの別の側面を見ると違った構図が浮かび上がる。世界の主要株式市場の多くは、特に4月初旬の「解放の日」後の安値以降、今年は米株式市場と同等か、もしくはそれ以上のパフォーマンスを達成しているのだ。

S&P総合500種指数は今年、年初来で15%上昇しているが、MSCIアジア(日本除く)は約25%上昇し、ドイツのDAXも英国のFTSE100もほぼ20%上げている。

重要なのは、米国以外の市場の上昇率は現地通貨ベースであり、ドル安によってドル換算のリターンがさらに押し上げられる点だ。ブラジルのボベスパ指数は年初来で30%上昇しているが、ドル換算の上昇率はさらに20ポイント高くなる。

JPモルガン・アセット・マネジメントのアナリストによると、今年は11月中旬までの国際株式のパフォーマンスは米国株を1520ベーシスポイント(bp)上回っており、1993年以来最大のアウトパフォームとなっている。

JPモルガンは、ドルは依然としてフェアバリュー(適正価格)に対して10%過大評価されており、米国株の国際株に対するプレミアムは34%と、長期平均の19%を大きく上回っていると見ている。

さらに米国株の世界株式時価総額におけるシェアは65%に達しているとの推計もある。つまりドル建てのエクスポージャーでヘッジが増えているとはいえ、外国人投資家の米国株投資比率は依然として極めて高い。

<この流れは続くのか>

米国外の投資家が次に追加の資金をどこに投資するのかは、26年に向けた市場固有の3つの問いに大きく左右されそうだ。すなわち、(1)米国株は割高すぎないか(2)米企業の好調な利益は維持されるのか、そして(3)AIはバブルなのか、という疑問だ。

25年のTICデータはまだ12月まで3カ月分が未公表で、年末の利益確定売りや記録的に長引いた米政府機関閉鎖が投資家心理にどのような影響を与えたかが明らかになるのはこれからだ。

米国株のバリュエーション、特定銘柄への集中、AI投資の将来リターンに対する恒例の懸念が再び強まれば、海外投資家が米国株の購入ペースを落とす可能性は十分にある。その場合、米株式市場は調整局面入りや相対的なアンダーパフォーム、あるいはその両方に対して脆弱になる。

しかし入手可能なデータから読み取れるのは、今年に入って米国の経済、政治、政策が大きく揺れ動いたにもかかわらず、海外勢の米国株への投資意欲がこれまで以上に強まっているという事実だ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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