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〔アングル〕米大手テック企業、AI資金調達で社債発行急増 市場に懸念も

ロイターNov 25, 2025 2:51 AM

Davide Barbuscia

- 米大手テック企業が人工知能(AI)投資の資金を手当てするために社債の発行を急増させており、投資家は懸念を募らせている。起債の増加は米社債市場を圧迫し、最終的にはテック企業株の魅力を損ないかねないためだ。ただ、大半の大手テック企業の債務比率は今のところ低い。

大手テック企業はこぞってAI用データセンターを建築しており、その資金調達のために積極的に公募方式で社債を発行している。現金で投資するのが通例だったシリコンバレー企業の姿勢転換と言える。

ロイターが公表データを集計したところでは、9月以降、「ハイパースケーラー」と呼ばれる主要クラウドコンピューティングおよびAIプラットフォーム企業5社のうち4社が公募で社債を発行し、その額は計900億ドル近くに達した。グーグルの親会社アルファベットGOOGL.Oが250億ドル、メタ・プラットフォームズMETA.Oが300億ドル、オラクルORCL.Nが180億ドル、アマゾン・ドット・コムAMZN.Oが150億ドルだ。マイクロソフトMSFT.Oだけはここ数週間、社債を発行していない。

投資家は、これら企業の負債比率が企業規模に比して依然低いため、現時点では株価への影響を過度に懸念していないと話す。

しかし社債の発行が突然増えたことで、市場が供給を吸収できるかという疑問が生じている。このことがAI関連支出への懸念を強め、今月の米国株急落の一因となった。S&P500種総合指数は年初から11%上昇しており、テック株が上昇に最も大きく寄与した。

ウェリントン・マネジメント・カンパニーのポートフォリオマネージャー、ブリジ・クラナ氏は「ハイパースケーラーの社債発行が相次いでいる。AI投資資金は私募のクレジット市場でもフリーキャッシュフローでもなく、公募の社債市場で手当てされることに、市場は気付いたのだと思う」と指摘。「この資金を手当てするには、どこからか資金を持ってくる必要がある。現在起きているのは、株式から債券への資金移動が必要だという気付きだ」と語った。

BofAセキュリティーズが最近公表したレポートによると、ハイパースケーラーの社債発行額は過去5年の年平均280億ドルから、今年は1200億ドル超に急増した。

市場はかねて、AI関連の巨額投資がまだ高い収益に結びついていないことを懸念しており、最近の社債発行増加によって新たな心配の種が加わった形だ。

投資運用会社セージ・アドバイザリーは最近のリポートで、AI関連の設備投資は2024年の2000億ドル超から25年には4000億ドル弱に、27年には6000億ドルに増加すると予想。正味の社債発行額は26年に1000億ドルに達するとの見通しを示した。

<市場の制約>

最近テック企業が発行した社債の需要は堅調だが、投資家は一部の新発債について相当大きなプレミアムを要求した。ジャナス・ヘンダーソンのリポートによると、アルファベットとメタは直近の社債発行で約10―15ベーシスポイント(bp)の新発プレミアムを支払った。

米投資適格債の米国債に対するスプレッドは歴史的に見て低水準にとどまっているものの、ここ数週間でやや上昇した。これは供給増への懸念が一因だ。

ジャナス・ヘンダーソンは「今年はほぼ一貫して信用スプレッドがじりじりと縮小していた。しかし、特にテック企業からの最近の供給急増により、状況が変化した可能性がある」と説明した。

もっとも、大手テック企業のAI投資資金調達に占める社債の割合が、今後も低水準にとどまると予想されているのは確かだ。UBSの最近の推計では、設備投資計画の約80―90%の資金源は依然としてキャッシュフロー。セージ・アドバイザリーの調査によれば、主要ハイパースケーラー企業は、負債より現金が多い状態から、負債がわずかに現金を上回る状態に移行するものの、利益に対する負債総額の比率(レバレッジ)は1倍未満を維持すると予想される。

ゴールドマン・サックスのアナリストは今週のリポートで「設備投資に対する短期的な制約要因としては、キャッシュフローやバランスシートの余力よりも、(社債)供給のボトルネックや投資家の需要の方が大きな役割を果たしそうだ」と指摘した。

オラクルを除けば、ハイパースケーラーは最大7000億ドルの社債を追加発行しても典型的な「Aプラス」格付け企業のレバレッジを下回り、安全と見なされるとゴールドマンは説明した。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は「これら企業は依然として非常に堅調な事業ラインを有し、莫大な現金を生み出し続けている」と語った。

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