
Nell Mackenzie
[ロンドン 2日 ロイター] - ヘッジファンドは8月に米国株を売り越した。9月は例年、株価が低迷することが多く、ヘッジファンドは慎重姿勢を維持している。
リッパーのデータによると、より伝統的な投資家も米国株を売り越した。
金融機関の調査リポートや市場関係者によると、世界の株式市場は記録的な高値付近で推移しているが、急落のリスクに脆弱な可能性がある。ヘッジファンドは慎重姿勢から最近の株価上昇には参加していないという。
ヘッジファンドの動向をまとめた。
(1)レバレッジが減少
ゴールドマン・サックスが8月25日までのデータを基にまとめたリポートによると、ヘッジファンドのレバレッジは8月に入り急減。下旬にかけて再び減少した。
8月は株価が世界的に上昇したものの、ゴールドマンによると、ヘッジファンドは売りを継続しており、「慎重な姿勢が強まっている」という。
モルガン・スタンレーのリポートによると、米国と欧州で取引に利用されたレバレッジは先週1%減少した。 ヘッジファンドの取引が依然として低調であることを示している。
(2)季節要因
米国株の9月のリターンは、過去20年間、約5割の確率でマイナスとなっている。企業は規制上の理由で9月に自社株買いを実施できないことが多い。
アーレン・キャピタル・マネジメントのマネジングディレクター、ブルーノ・シュネラー氏は、システマティック戦略のヘッジファンドについて、リスク管理上の制限で今後、買いが細る可能性があると指摘。
「ボラティリティーは季節的に秋に向けて上昇する傾向がある。システマティック戦略のポジションはすでに限界に近く、市場のショック吸収能力は通常よりも低下している」と指摘した。
(3) 脆弱性
ポーチェスター・キャピタルのオマール・サイード最高投資責任者(CIO)は、9月は米利下げが広く予想されており、株式市場から急激に資金が流出する可能性は低いが、他の市場にリスクが潜んでいる可能性があると指摘。
同氏は、日本や英国などで国債が売られ、利回りが数年ぶりの高水準に上昇しており、市場の脆弱性を示しているとし「ある市場で危機が起きれば、別の市場にも波及する」と述べた。
(4)売りの悪循環
UBSの市場・トレーディングデスクによると、米国株を直接保有する投資家は現在、所得に対する株式保有額の比率が過去最高に達している。
今年の個人の株式直接保有高は、可処分所得の265%に達する見通し。これまでの過去最高は2021年の243%だった。
個人投資家の取引は米国株の取引全体の40%強を占める。
アーレン・キャピタルのシュネラー氏は、急激な成長鈍化の兆しが見られれば、投資家が投機的な買いを減らし、売りが売りを呼ぶ展開になるリスクがあると述べた。
(5)中国株
一方、ゴールドマン・サックスによると、8月の中国株への資金純流入は記録的な高水準だった。
モルガン・スタンレーによると、世界のヘッジファンドは中国株への投資を拡大しており、8月の買いは2月以降で最大となる見通しだ。nL6N3UJ06R