TradingKey – 米東部時間8月23日、イーロン・マスク氏率いるxAIは正式に、旗艦モデル「Grok 2.5」をオープンソース化し、Hugging Faceプラットフォーム上で公開した。「新モデル発表と同時に旧バージョンをオープンソース化する」との約束を履行した形であり、世界のAIオープンソース・エコシステムに新たな変数を注入するとともに、マスク氏がテック大手に挑む戦略的布石となった。
Grok 2.5は圧倒的な技術力を誇る。総パラメータ数は9,050億に達し、最大13.11万トークンのコンテキスト長をサポート。混合エキスパート(MoE)アーキテクチャを採用し、複雑なタスク処理において卓越した性能を発揮する。現時点で最強クラスのオープンソース大規模言語モデルの一つと位置付けられる。さらにxAIは、より進化した「Grok 3」を6か月以内にオープンソース化する計画を明らかにしており、技術革新のスピードは一段と加速している。
もっとも、オープンソース化は完全な「開放」を意味しない。xAIは厳格な利用条件を設けており、非商用利用、もしくは年間収益100万ドル未満の企業にのみ利用を許可する。さらに重要なのは、本モデルを用いて新たな基盤モデルを訓練することを禁止している点だ。この「反競争的」とも言えるライセンスは「カスタマイズされた制約」と批判され、商業分野での幅広いイノベーションを阻害する可能性が指摘されている。
マスク氏の野心はオープンソースにとどまらない。金曜日、彼はxAIに人材を募集し、「Macrohardという純粋なAIソフトウェア企業を共に創ろう」と呼びかけた。この「Macrohard」という名称は明らかに「Microsoft」を揶揄するもので、マスク氏はすでに7月から示唆していた。さらに8月1日には、xAIが「Macrohard」の商標を申請済みであり、マイクロソフトに対する公開挑発とみなされている。その背景には、テスラ株の空売りや気候政策を巡る立場の相違など、マスク氏とビル・ゲイツ氏の長年の確執があり、その競争はAI分野にまで拡大している。
商業化の側面では、xAIは急速に収益化を進めている。Grokはすでに文脈広告に組み込まれ、Xプラットフォームにおける広告コンバージョン率を40%押し上げた。さらにAI事業を支えるため、xAIはテネシー州に20万枚のGPUを導入し、将来的には100万規模のスーパーコンピュータセンターを建設する計画を進めるなど、巨額のハードウェア投資を行っている。
今後を展望すると、マスク氏のAI戦略は「オープンソースによる開発者エコシステムの取り込み」と「独自商業圏を築く閉鎖型競争」の二本柱で進行している。Grokのオープンソース化で開発者を引き付ける一方、「Macrohard」などのプロジェクトによって自立した商業的循環を構築する狙いだ。その目的は単なる技術的優位にとどまらず、世界のテクノロジー権力構造の再編にある。もっとも、この壮大な構想が実現するかどうかは、計算資源への投資、人材集約、商業化の実行力とのバランス、さらには熾烈な世界的AI競争において継続的な革新スピードを維持できるかにかかっている。