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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕TACOトレード期待で米株最高値、「関税回避が前提」という不安定すぎる楽観

ロイターJul 14, 2025 7:21 AM

By Neil Unmack

- タコスはおいしく食べ応えもあるが、あまりに勢いよく食べると崩れて具がこぼれてしまいがちだ。これと似た状況が、現在の世界の株式市場でも起きているかもしれない。

「トランプ米大統領が結局は高関税の導入を回避する」、すなわち「TRUMP ALWAYS CHICKENS OUT(トランプ氏は常にびびって退く)」ことを前提とした「TACOトレード」が、株式相場を最高値圏に押し上げている。だが、それは危うい均衡の上に成り立っている。

トランプ氏は前週10日、カナダからの輸入品に35%の関税を課すという書簡を公表した。この週には銅の輸入に対する50%の関税や、医薬品に対する最大200%の関税といった予想以上に強硬な発表が相次いだ。

市場がたどり着いた結論は変わっていない。すなわち、トランプ氏が大声で威嚇しようとも、関税によって経済が混乱することはないという見方だ。S&P総合500種株価指数.SPXは最高値圏にある。米国内経済への感応度が高い中小型株で構成するラッセル2000指数.RUTも、4月2日にトランプ氏が国別の報復関税を打ち出した当時の水準を上回っている。

TACOトレードはトランプ氏の心理に賭けるだけの取引ではない。「トランプ氏が結局、関税を断念する可能性は非常に高い」と予想できる根拠は、十分ある。

高関税の発動による影響が出たとしても、米国では銅鉱山やスマートフォン工場をすぐに稼働させることができないため、より低い関税で妥協する可能性がある。主要な貿易相手国との交渉の着地点が、4月2日に示された基本税率の10%前後に収まるなら、経済への影響は限定的にとどまるかもしれない。

ただ、TACOトレードはトランプ氏をつい信じたくなるほど予想しやすい人として扱っているが、トランプ氏は決して予測可能な人物ではない。

トランプ政権における政策の誤りは制度的な特徴であり、それは1期目に新型コロナウイルス感染症への対処として効果が疑わしい治療法を吹聴したことからも明らかだ。7日には日本に対し8月1日から25%の関税を課すと発表しており、最終的な税率は基準の10%を上回る公算が大きい。

いまではTACOトレードによって醸成された自信が、むしろ危うい論理を市場にもたらしつつある。トランプ氏は11日、NBCの取材に対し、株式相場が堅調に推移しているのは自身の関税政策が「好意的に受け止められた」証拠だと主張。経済に打撃を与えるどころか、さらなる関税措置の正当性すら示すものだと述べた。

だが、市場は依然として本格的な貿易戦争の影響を織り込んでいない。これまでのところ、米国は実質的な通商交渉にほとんど至っておらず、今後はさらに過激な交渉や脅しが展開される可能性もある。加えて、これまで発表された関税が米国の消費者物価に与える影響が本格的に表面化するのは、今月からとなる見通しだ。

関税による影響が大きいと想定される業種の株価には、過信の兆しも見られる。

LSEGによると、欧州の大手製薬会社であるスイスのノバルティスNOVN.S、英アストラゼネカAZN.L、仏サノフィSASY.PA、英グラクソ・スミスクライン(GSK)GSK.Lの予想PER(株価収益率)が平均11.8倍と、年初時点の11.3倍を上回り割高感が強まっている。自動車株ではステランティスSTLAM.MI、独フォルクスワーゲン(VW)VOWG.DE、ポルシェ、BMWBMWG.DE、メルセデス・ベンツMBGn.DEも同様だ。平均PERは8倍と、こちらも年初を上回った。

株高が続くにはトランプ氏による関税の撤回が不可欠だ。ただ同時に、株高によってトランプ氏が関税を撤回する可能性はますます低下している。

●背景となるニュース

*トランプ米大統領は10日、カナダから輸入される製品に35%の関税を課すとする書簡を公表した。同時に、株式相場が堅調に推移しているのは自身の通商政策の正当性の証拠だと述べた。nL6N3T801F

*トランプ氏は8日、輸入する銅に50%の関税を課すと述べたほか、半導体や医薬品などに対する関税を近く発表する考えも示し、医薬品の関税率は200%に達する可能性があるとした。nL6N3T50Y7

*米国は現在、欧州連合(EU)を含む主要貿易相手国と協議を進めている。

*トランプ氏はNBCのインタビューで「関税は非常に好意的に受け止められていると思う」「株式市場は今日、最高値を更新した」と述べた。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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