
Jonathan Guilford
[ニューヨーク 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 人工知能(AI)ブームが賭けであるのならば、勝つためにできる限りの賭けをすべきではないだろうか。これが米グーグルの親会社アルファベットGOOGL.Oの明らかな経営哲学だ。
かつてはチャットボットがグーグルの検索エンジンの地位を奪うのではないかとの懸念に脅かされたが、今やアルファベットは機械学習ハードウエアの王者として君臨する米半導体大手エヌビディアNVDA.Oの時価総額に迫る勢いだ。アルファベットのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は半導体から生成AIモデル、サーバーに至るまであらゆる分野で存在感を誇示している。
AIによる「中抜き」によって次はどこが犠牲者になるのか、という心配が絶えない中、アルファベットの巨額支出は投資家に安心材料を与えるだろう。だがこれはライバルを痛めつけるための危うい手段だ。
同社が4日発表した堅調な2025年第4・四半期決算は必要な追い風ではあるが、本筋ではない。むしろビッグテックにとっての核心的な疑問は、財務的圧力によってサーバーやチャットボットへの支出を躊躇する企業が出てくるかどうかだ。ピチャイ氏が約束した26年の1750億―1850億ドルの支出は、昨年の約2倍に相当し、メタ・プラットフォームズMETA.Oの巨額支出予測さえも50%上回る。
これほど大きな出来事にとっては微妙な局面だ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、生成AIモデル「チャットGPT」のリリースで機械学習ブームの火付け役となったオープンAIは、後発ながら復活を遂げつつあるグーグルの脅威をかわすために社内で「コードレッド(緊急事態の警告)」を発動した。
オープンAIのサム・アルトマンCEOの主要提携先であり、支援企業でもあるマイクロソフトMSFT.OとオラクルORCL.Nのそれぞれの株価は、オープンAIへの過大な依存懸念から揺れている。ウォール街は、これらの企業が降伏に追い込まれる可能性を漠然とながらも予見している。調査会社ビジブル・アルファによると、アナリストらはグーグルとメタ・プラットフォームズがAI投資を拡大し続ける中で、マイクロソフトとオラクルは2030年に資本支出削減に追い込まれると予想している。懸念がさらに高まれば、その予測時期がAI競争の状況を測る指標となるかもしれない。
対照的にアルファベットは、企業価値(EV)を利払い・税・償却前利益(EBITDA)で割った倍率が競合他社を追い抜く勢いで上昇しており、かつてはAI分野で絶対的な恩恵を受けていたエヌビディアに迫る水準だ。
グーグルの自社開発半導体「テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)」は、主要タスクでコスト競争力のある代替手段を提供することを約束する。グーグルのAIモデル「ジェミニ」は、チャットGPTの市場シェアを奪取している。
人気AIモデル「クロード」を手がけて急成長中のアンソロピックは、ともにグーグルの半導体とサーバーを利用し、グーグルから資金提供も受けている。ジェミニとクロードの各種バージョンは、オープンルーターで利用されている上位10モデルのうち五つを占めている。
ただ、こうした状況は激しい競争の中で変わる可能性もある。アルファベットの遍在性はチャンスとは裏腹に、次の危機がもたらす脆弱性もはらんでいる。
しかしながら、他社が揺らいでいる中では、資金力で支配するという不確実な約束であっても、確実に足跡を残すことだろう。
●背景となるニュース
*アルファベット、今年は設備投資倍増へ クラウド事業48%増収nL6N3Z01EZ
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)