tradingkey.logo
tradingkey.logo

COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕トランプ氏、FRB支配目指す戦いは敗色濃厚か

ロイターJan 13, 2026 12:20 AM

Gabriel Rubin

- 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、米国の伝説的ロックバンド「グレイトフル・デッド」の熱心なファンで、彼らの曲に登場する「勝つには代償が必要、負ければさらに高くつく」という言葉の意味をよく分かっている。グレイトフル・デッドのギタリスト、ボブ・ウェア氏が亡くなった翌日、パウエル氏はその言葉に込められた信念を行動で示した。11日夜に異例の動画による声明を公表し、自身が刑事捜査の対象になっていると明らかにした上で、捜査はホワイトハウスが金融政策に影響を及ぼすための「口実」だと率直に語ったのだ。議長としての任期が残り数カ月になった今、連邦最高裁判所や議会が今のところ中央銀行の独立性を守ってくれている中で、パウエル氏は自らの立場を鮮明にする絶好のタイミングを選んだと言える。

まるで発作のようなトランプ大統領がFRBを支配しようとする戦いは、首都ワシントンのFRB本部改修工事に焦点を当てる形で数カ月前に始まった。パウエル氏はトランプ氏をともにヘルメットをかぶって工事現場に案内した際に、カメラの前で工事費超過に関する厳しい質問を巧みに切り抜けた。それだけにこの件でパウエル氏を刑事捜査するというのは、衝撃的なエスカレーションであり、稚拙なやり方でもある。トランプ氏自身が金融政策を巡る意見の違いを理由にパウエル氏を解任したいと発言していることで、その策略が馬脚を表している。

パウエル氏はこれまで「全面的な反撃」を控えてきた。それでもパウエル氏は長きにわたって共和、民主両党から大きな信頼を勝ち取り、最初はオバマ政権、次いで第1次トランプ政権、バイデン政権によってFRBの高官に指名された。同じく重要なのは、連邦最高裁の判決がFRBをホワイトハウスの越権行為から守ってきたことだ。さらに2020年のコロナ禍における緊急融資プログラムを強力に主導し、その後も冷静な対応を見せたおかげで、パウエル氏は信頼を高めて、議会との人脈強化にもつながった。このためFRB指名人事の承認を行う上院銀行住宅都市委員会に属する有力な共和党議員のトム・ティリス氏は早速、刑事捜査が終わるまでトランプ氏が指名するFRB人事を全て阻止すると表明した。

対照的にトランプ氏は攻撃する上で極めて不適切なタイミングを選んでしまった。パウエル氏の議長としての任期は5月に終了するので、後任人事を巡る駆け引きが間もなく始まる。また連邦最高裁は来週、トランプ氏が目指すFRBのクック理事解任について審理を行う予定だ。既に下級審では、トランプ氏の命令だけでFRB理事会の構成を代えることはできないとの判断が下されている。

パウエル氏が立ち向かうことも可能だ。議長としての任期終了は近いが、理事としての任期は2028年まであり、7人の理事ポストの一角を占め続けられる。トランプ氏には依然として強大な権力があり、それをさらに乱用してもおかしくない。しかし一段と驚くような挑発がない限り、ホワイトハウスの金融政策を巡る戦いは、決定的な敗北の局面に達したのかもしれない。

●背景となるニュース

*米政権が刑事訴追警告とパウエル氏、利下げ圧力強化の「口実」nL6N3YD02V

*パウエル議長捜査、共和党内でも懸念 FRB人事承認に影響もnL6N3YD15P

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

関連記事

Tradingkey
KeyAI