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〔アングル〕ヘッジファンド、株式取引のレバレッジが過去最高水準 一部で警戒感も

ロイターDec 4, 2025 2:48 AM

Anirban Sen Nell Mackenzie

- ヘッジファンドは人工知能(AI)ブームに沸く金融市場で最大限の利益を手に入れようと、株式取引のレバレッジをほぼ過去最高水準に引き上げ、負債を活用する戦略でリターンを高めようとしている。

この数年、ファンドがより大規模かつ複雑になるのに伴って負債に頼る戦略が急増。レバレッジの拡大により、相場が調整局面入りした際にファンドや市場全体がより大きな損失に見舞われるのではないかとの懸念も高まっている。

JPモルガンのポジショニングインテリジェンス責任者、ジョン・シュレゲル氏は「当社の帳簿上、レバレッジは歴史的高水準付近にあることが分かる。市場は流動性に対するエクスポージャーの大きさの点で、コロナ禍前から現在にかけてかなり拡大しており、そのペースはヘッジファンドの運用資産残高(AUM)の伸びよりもはるかに速い」と述べた。

ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーという世界最大級のプライムブローカーがまとめたデータによると、株式のロング・ショート戦略を採る伝統的ヘッジファンドのレバレッジは、銀行によって多少の違いはあるものの、過去最高に近い水準にあり、しかも拡大し続けている。これらのデータはこの数週間に限られた一部のクライアント向けに送付されたもので、ロイターがその内容を確認した。

ゴールドマンのプライムブローカレッジに関するデータによると、米国のヘッジファンド全体は11月にレバレッジがグロスとネットでともに増加。世界のヘッジファンドは投資家資金と取引ポジションの両方の総レバレッジの簿価に対する比率が285.2%、つまり3倍ほどに達した。この比率は年初来で約12.4ポイント上昇し、過去最高に近い。また米ヘッジファンドによる個別株選別買い戦略のレバレッジは過去3年で最高に達した。

JPモルガンの11月末時点のデータによると、レバレッジ比率は297.9%とこの5年で最も高く、過去最高に近い。定量分析型ファンドやマルチストラテジー型ファンドのレバレッジ比率は先月末時点でそれぞれ平均645.3%と444.3%だった。

モルガン・スタンレーのノートによると、米ヘッジファンドのレバレッジ比率は2倍を超えており、過去15年間でこの水準を上回った期間は全体の1%にすぎなかった。

3人のヘッジファンドマネージャーと1人のプライムブローカレッジ幹部がロイターに語ったところでは、ヘッジファンドが買いと売りの取引を相殺すると、銀行が提供するレバレッジは高まる。関係者によると、ヘッジファンドは少なくとも10倍のレバレッジを受けており、これは歴史的な高水準だ。

レバレッジ水準の上昇は、AIバブル懸念による最近の売り市場にあってもヘッジファンドが強気な姿勢を維持していることと軌を一にしている。

UBSは11月27日のクライアント向けノートで「(11月は)主にロングの積み増しがけん引役となり、世界株式の買いは今年2番目に大きい規模となった。これによりネットおよびグロスのレバレッジが押し上げられ、帳簿ではロングへの集中度が大幅に高まった」と指摘した。

<高まる警戒感>

米連邦準備理事会(FRB)から国際決済銀行(BIS)に至る金融規制当局は著名なファンドのレバレッジの度合いを精査している。

ヘッジファンド投資家のマイケル・オリバー・ワインバーグ氏は、レバレッジは利益と損失をともに増幅させると指摘。「もし大規模なマルチストラテジーファンドの多くが同じ取引を大量に抱えていた場合、手仕舞いになれば誰もが同時に出口へ殺到し、反対取引がほとんどないことになる。これは大きな市場変動を引き起こし得る」と話す。

ファンドの間では過去10年間にレバレッジ戦略が一般的になった。世界で最も知名度の高いグローバル・マルチストラテジーファンド、いわゆる「ポッドショップ」は、借入によってより大規模な投資を行い、リターンを高めてきた。

顧客のポジションを基に集計したゴールドマンのデータからは、マルチストラテジーファンドはヘッジファンドの株式取引で時価総額のおよそ3分の1を占め、運用資産は2010年の910億ドルが今年は約4280億ドルに増加したことが分かる。

それでも、一部の銀行家や業界専門家は、現在のレバレッジ水準について過度な懸念は抱いていない。レバレッジ戦略がこれまでのところおおむね成果を上げているためだ。モルガン・スタンレーのデータでは、世界のヘッジファンドは今年11月末までの平均リターンが11%強となっている。専門家は上位のマルチストラテジーヘッジファンドは通常、厳格なリスク管理プロセスを備え、それが市場の混乱期をうまく乗り切る助けとなっていると指摘する。

JPモルガンのシュレゲル氏は「レバレッジについて覚えておくべきことは(中略)業界が進化を続ける中で、クライアントは特定のリスクの監視やヘッジ、そして流動性の外部委託がより上手くなっているということだ」と述べた。

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。
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