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〔アングル〕米政府機関閉鎖、長期化なら両党に打撃も 地域経済に影響波及

ロイターOct 7, 2025 2:10 AM

Nathan Layne

- 米東海岸にあるバージニアビーチでは11月4日の州選挙を控え、期日前投票所の入口の両脇に女性が1人ずつ立っていた。民主党員のベティ・スネレンバーグさん(84)、共和党員のグレース・クックさん(61)はそれぞれ、党候補の支持を呼びかけるパンフレットを配っていた。

左派と右派は連邦政府のまひ状態の責任を互いのせいにしており、政府機関の閉鎖が始まったばかりの状況でこの2人の姿は、政治勢力の分断の深刻化を象徴するものと捉えることもできる。

だが2人には共通する懸念もあった。政府機関の閉鎖が数週間、あるいは数カ月続けば、支持政党の主張が有権者に届かなくなる可能性があるという点だ。特にバージニア州のこの地域は公務員や軍関連の雇用に依存しており、数万人の労働者が休職に追い込まれるか、無給で働いている。

閉鎖期間が長期に及べば、世界最大級のノーフォーク海軍基地など、複数の軍事施設を抱えるハンプトンローズ地域の経済に深刻な打撃を与える可能性がある。

スネレンバーグさんは、閉鎖が長引いて、有権者が医療補助金の延長よりも広範な経済的影響を重視するようになることを心配していた。退職前に近くの海軍情報センターで働いていた彼女は「民主党には譲ってほしくない。弱みを見せることになる」と語ったが、「1カ月以上続けば、影響は結局自分たちに跳ね返ってくるのではないか」という不安も抱いている。

一方クックさんは、政府機関閉鎖が州知事選の主要な争点となるかどうかは分からないと述べた上で、長期化すれば共和党にとっても来年の中間選挙に向けて逆風になることを危ぶんでいる。

彼女は、射殺された保守系政治活動家チャーリー・カーク氏への敬意を示す「フリーダム」と書かれたTシャツを着ていた。「この地域では――海軍や国防総省、連邦政府の仕事が多いから」

国防総省では、全体の約半数に当たる約33万5000人の民間職員が閉鎖計画に基づき休職対象となる。

世論調査も、スネレンバーグさんとクックさんの双方が抱く懸念を裏付けている。それは、両党とも支持を失う可能性があるという点だ。ただ少なくとも現時点では、両院を支配する共和党とトランプ大統領に責任があると多くの人々が感じているようだ。

9月下旬に実施されたマリスト大学、公共放送サービス(PBS)、公共ラジオ(NPR)の調査では38%が共和党、27%が民主党に責任があると回答。31%は両党に原因があると答えた。

政府機関の閉鎖は、州レベルの政治にも影響を与えている。下院議会に出馬している民主党のマイケル・フェガンズ議員は前週、30秒の広告を公開し、バージニアビーチ選挙区に及ぶ経済的影響を強調。「常に『取引の達人』を自認してきた人物(トランプ氏)が、再び政府を閉鎖に追い込もうとしている」一方、「バイデン政権下では政府閉鎖はなかった」と訴えた。

一方、共和党候補のティム・アンダーソン氏は、上院で暫定予算案を阻止できる民主党が、閉鎖開始時点では「妥協を拒む、譲らない党」と見なされると考えている。ただ閉鎖が長引けば、有権者は大統領に責任があると見なし「長期化するほど、共和党にとって不利になる」との見方を示した。

<経済への影響>

政府機関の一部閉鎖は10月1日から始まり、科学研究や経済指標の報告など幅広い業務が停止した。例外を除き、多くの連邦職員は政府機関再開の合意が成立するまで給与を受け取れない。

オールドドミニオン大学経済学部長のボブ・マクナブ氏によると、ハンプトンローズ地域では6万人が連邦政府職員、8万5000人が現役軍人として勤務している。政府支出の減少により、長期閉鎖が続けば同地域の経済活動は月10億ドル縮小する可能性がある。

取材に応じた有権者や連邦職員、選出公職者のほぼ全員が、自身や家族への経済的影響を懸念していた。

ただ共和党の一部関係者は、地域経済への打撃があってもトランプ氏には主張を貫いてほしいと述べ、暫定予算案を阻止するために民主党が影響力を行使するのは、原則的に間違っていると主張した。

民主党は、まず政府機関を再開させ、その後に医療補助金の問題に取り組むという合意を、共和党が守るとは信じていない。これらの補助金は、2021年に民主党が成立させた新型コロナウイルス感染の救済策の一環であり、現在は2400万人の米国民が医療費を支払う際に利用している。

共和党の投票立会人を務めるジャネット・キャラウエーさん(69)は、トランプ氏の対応次第では、政府閉鎖を理由にさらに多くの公務員を解雇する方針を支持する可能性があると述べた。すでに2025年末までに30万人が対象になる予定だという。

「長引くのは心配だが、民主党は自分で自分の首を絞めていると思う」とキャラウエーさんは言った。「トランプ氏を信頼している。彼は取引の達人だ」

ロイターの取材に応じた、民主党寄りの無党派層の2人は、共和党が情報戦で優勢になっていることを懸念していると語った。共和党は、民主党の支出案が不法滞在者にも医療保険を拡大するという事実に反する主張を繰り返すことで、世論の支持を広げつつあるという。

そのうちの1人は、民主党の党指導部について「真実を伝える努力が十分ではない」と述べ、「残念ながら共和党のメガホンの方が大きいようだ」と語った。

スネレンバーグさんとクックさんも、それぞれの支持政党と同様、政府閉鎖について話し合うために相手に歩み寄ることはなかった。

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