tradingkey.logo

トランプ氏の権限拡大、歯止め失い政府機関が存亡の危機

ロイターSep 1, 2025 8:32 AM

[ワシントン 29日 ロイター] - トランプ米大統領が連邦政府機関のあらゆる業務に及んで自身の権限を拡大しようとする動きに歯止めがきかなくなってきた。8月最終週には連邦準備理事会(FRB)のクック理事、疾病対策センター(CDC)のモナレズ所長、鉄道事業を監督する陸上運輸委員会(STB)のプリマス委員に相次いで解任を通告し、そうした権限をどこかで行使できるのかを試しているかのようだ。

これらの措置からは、通常は政治的な影響から独立した立場になると見なされる機関にまで影響力を及ぼしたいというトランプ氏の願望が透けて見える。

複数の専門家は、一連の解任通告によって、民間への有益な情報や大統領向けに専門知識を提供しつつ、特定政党の政策に左右されずに業務を遂行するFRBやCDCなどへの信頼が損なわれかねないと懸念を示す。この状況を許せば、他の独立機関の足場も危うくなるかもしれない。

連邦政府の機能強化と民主主義の発展を提唱する団体「パートナーシップ・フォー・パブリック・サービス」の代表者を務めるマックス・スティア氏は、「悪い方へ向かう新たな潮流で、大統領による著しい権力の掌握を物語る。大統領には多くの権限があるが同時にさまざまな限度がある。現在の大統領にはそうした限度をわきまえていない」と指摘した。

ホワイトハウスの高官らは、トランプ氏が法的に認められた権限の範囲で行動し、有権者に託された政策課題を実行しようとしていると反論する。政権はモナレズ氏とプリマス氏の解任について、トランプ氏の政策課題にそぐわず、CDCに関しては中核的な使命に専念させることが理由だと主張した。

関係者の話では、モナレズ氏は科学的証拠と矛盾すると考えるワクチン政策変更に抵抗したもようだ。プリマス氏は、交流サイト(SNS)への投稿が鉄道と無関係のトランプ政権の政策を批判したと読める内容を含んでいた。

クック氏の場合、政権側は住宅ローンに関する不正があったと主張したが、同氏は否定している。ただ、トランプ氏はクック氏解任に別の動機があることを隠していない。26日の閣議では、FRBは間もなく自身が望む利下げに賛成するメンバーが理事会の多数派を占めるだろうと語った。

フォーダム大法科大学院准教授で、大統領権限を専門に研究するジェーン・マナーズ氏は、クック氏の理事解任が受け入れられた場合には「ドミノ倒し」が起きると警告。「もはや米国は露骨な政治圧力とは無縁の意思決定者を持つ行政国家ではなくなる」と問題視した。

ホワイトハウスは、トランプ氏のやり方は適切で、一連の解任通告は妥当だとの見解を崩していない。

ロジャース大統領報道官は「トランプ政権は憲法と議会が行政府に承認した全ての権限を行使し、トランプ氏が選挙で掲げた米国第一主義の政策を実行している。トランプ氏は国民の利益を、外国や教育機関、選挙を経ていない官僚、浮世離れしたウォーク(社会的意識に目覚めた人々)よりも優先するという約束を守り続けている」と言い張る。

首都ワシントンに州兵を動員したトランプ氏は直近では、野党民主党の知事がいる中西部の都市シカゴに治安対策のために州兵を送る可能性にも言及し、「私が望むことは何でもできる権限」があると言い切った。

リンカーンやフランクリン・D・ルーズベルトら野心的な大統領は過去にも存在した。だが、トランプ氏が異なるのは上下両院を与党共和党が支配し、連邦最高裁判所判事も保守派が多数を占める中で、今のところ有力な反対勢力が乏しいことだ。

カリフォルニア大学バークレー校のダニエル・ファーバー教授(法学)は「歴代大統領は、政府機関による非政治的で専門的な判断の必要性を尊重してきた。トランプ政権にそういった判断は存在せず、トランプ氏は政府を自分の一族企業トランプ・オーガニゼーションとほぼ同一視し、同じやり方で運営したがっている」と分析した。

連邦最高裁は、トランプ氏が名目上独立的な規制機関の職員を解任できることなどを含めた同氏が主張する権限の一部を認めた一方、そうした権限がFRBに全面的な適用はできないかもしれないとの見解も示している。トランプ氏がその権限の限界点をあえて試そうとしているのは明らかだ。

監修者:huanyao Fang
免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

関連記事

Tradingkey
tradingkey.logo
tradingkey.logo
当社が提供する日中データはRefinitivより配信されており、同社の利用規約が適用されます。終値データ(過去・現在)についてもRefinitivより提供されています。全ての相場情報は現地取引所時間で表示されます。米国株式のリアルタイム最終取引価格はNasdaqを通じて報告された取引のみを反映しています。日中データは最低15分遅れ、または各取引所の要件に準じて遅延配信されます。
* 当コンテンツ(分析資料・取引戦略等)は第三者プロバイダーであるTrading Centralより提供されており、記載の見解は分析官の独立した評価及び判断に基づくものです。投資家個々の投資目的や財務状況は考慮されておりません。
リスク告知:当社ウェブサイト及びモバイルアプリは特定の投資商品に関する一般的な情報のみを提供しており、Finsightsは金融アドバイスや投資商品の推奨を行うものではありません。本情報の提供をもってFinsightsが投資助言を行っていると解釈されることはありません。
投資商品には元本割れを含む重大なリスクが伴い、全ての投資家に適するものではありません。なお、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。
Finsightsは、第三者広告主または提携先が当社ウェブサイト・モバイルアプリ上に広告を掲載することを許可する場合があり、これら広告主から広告への反応に基づく報酬を受けることがあります。
© 著作権: FINSIGHTS MEDIA PTE. LTD. 無断複写・転載を禁じます。
KeyAI