Rajesh Kumar Singh
[シカゴ 18日 ロイター] - 米国の航空会社は、収益を拡大し景気変動による影響を小さくとどめるため、新型コロナ禍後にビジネスクラスなどプレミアムシートへの投資をさらに増やした。
この戦略は奏功しており、旅行需要全般が落ち込む中でもプレミアムシートを提供する航空会社の利ざやは堅調を保っている。価格に敏感な顧客の支出が減った分を、富裕層の力強い需要が相殺している形だ。
デルタ航空DAL.Nは10日、第2・四半期にプレミアムシートの売上高が前年同期比5%増えたのに対し、エコノミークラスは5%減ったと発表した。10%ポイントという両者の差は新型コロナ禍以降で最大。プレミアムシートの増収が貢献し、第2・四半期の利ざやは2桁台を達成した。nL6N3T70PV
ユナイテッド航空UAL.Oも第2・四半期、旅客収入全体が1.1%増にとどまったのに対し、プレミアムシートの収入は5.6%も増え、業績を支えた。nL6N3TD0TI
トランプ米大統領の関税措置による景気後退懸念が広がり、旅客機予約が打撃を被った第1・四半期にも同様の傾向が見られていた。
プレミアムシートの堅調な需要について航空業界幹部らは、航空旅行支出の75%を占める年収10万ドル以上の米国の家計の財政状況が健全だからだと説明している。
デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は10日、「わが社の中核的顧客は健全な状態にあり、引き続き旅行を優先している」と述べた。
<エコノミークラスは不振>
対象的に、所得の低い層は景気全般の不透明感と生計費の高騰によって打撃を被っている。
バンク・オブ・アメリカのデータによると、6月は中・高所得層の支出が底堅かった一方、低所得層の支出は減少した。
ロイターが確認した格安航空ジェットブルーJBLU.Oの社内メモによると、同社は先月、需要低迷により2025年は採算割れになりそうだとして、新たなコスト削減策を計画中であることを職員に通達した。
例年なら夏場はかき入れ時だが、今年はエコノミークラスの需要が弱いため、航空会社は空席を出さないよう値引きを迫られている。
フロンティアULCC.Oやスピリット航空SAVEQ.PKなどの格安航空は、これ以上の値引きを避けようと便数の削減に力を入れている。
航空会社幹部らは、プレミアムシートが業界の「利益の差別化要因」になったと指摘する。プレミアムシートの顧客はあまり価格に左右されないからだ。
これまでの成功に意を強くした航空会社は、プレミアムシートをより魅力的にするための投資をさらに増やしている。
ユナイテッドは新たなボーイング787―9型機に半個室型で大型スクリーンなどを備えたプレミアムシートを導入した。
<格安航空も参入>
利ざや縮小に直面した格安航空会社も、プレミアムシート市場への参入を試み始めた。
ジェットブルーは国内線にファーストクラスの座席を導入し、ニューヨークとボストンの空港に初めてラウンジを開設した。フロンティアも客室の先頭座席2列をファーストクラスに改修中だ。
ビジュアル・アプローチ・アナリティクスのデータによると、米国内線のプレミアムシート数は2019年以来14%増と、エコノミークラス席の3倍の伸びを示している。
ただプレミアムシートは供給過剰に陥り、価格決定力が損なわれかねないとの懸念もある。