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COLUMN-AIにも米国にも執着せず、2026年の強気な株式投資戦略とは

ロイターDec 23, 2025 2:46 AM

Helen Jewell

- 2026年に安定した投資を求める株式投資家にとって、人工知能(AI)ブームを超えた投資拡大は新年の抱負として有効かもしれない。そして、チャンスは目に見えない形で潜んでいる可能性がある。

投資家が警戒する理由は十分にある。米株式のバリュエーションは現在過熱気味で、S&P総合500種.SPXに関して経済学者ロバート・シラー氏が編み出した景気循環調整後のシラー株価収益率(PER)は40倍を超えており、1990年代のITバブル期の水準に極めて近い。

さらに投資資金は極めて集中している。ゴールドマン・サックスの分析によると、米テクノロジー大手5社のエヌビディアNVDA.O、アップルAAPL.O、アルファベットGOOGL.O、マイクロソフトMSFT.O、アマゾン・ドット・コムAMZN.Oの時価総額合計は、ユーロSTOXX50指数.STOXX50や、英国やインド、日本、カナダの株式市場全体の時価総額を上回っている。

こうした背景から、AIブームに支えられた25年の株価上昇への疑念が徐々に広がりつつある。投資家の不安心理を示す「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のVIX指数(ボラティリティー・インデックス).VIXは過去数カ月間に急上昇した。

しかし、25年には米ハイテク銘柄以外の多くの地域・セクターで安定したリターンが実現した。私たちはこれらの多くが26年も同様のパフォーマンスを発揮できると考えている。

<米国にこだわらなくていい>

地域別に見ると、2025年の株式市場の主役は米国ではなかった。

現地通貨ベースのリターンで見た年初来のパフォーマンスでは、世界最大の株式市場である米国は12月上旬時点では20位に沈んでいた。首位となったのは韓国とスペインだ。

二桁のリターンを得るためには、米国にとどまる必要はまったくなかった。ゴールドマン・サックスによると、過去12カ月間に世界全部の国の株式市場の84%が10%超上昇している。

国際的に株式が来年も引き続き好調を維持する可能性は高い。

欧州株は、景気回復の恩恵を受ける可能性がある。融資残高は既に増加傾向にあるほか、地域の購買担当者指数(PMI)は50を大きく上回り、経済拡大を示している。この景気循環的な拡大は、26年にはドイツの財政刺激策と欧州全体の防衛支出拡大によって加速する可能性がある。

こうした状況は、特にユーロの対ドル為替レートEUR=が安定化すれば、トラックや鉱山機械メーカーなどの欧州の循環型企業の業績を支えるはずだ。

日本では、健全なインフレと、多くの企業が効率化と中核事業への集中を図る構造改革が相まって、26年も収益性と株主還元が高まる可能性がある。

さらに、日本の国会は1170億ドルの補正予算案を成立させ、大規模な財政刺激策を進める。このことも広範な経済を支えるはずだ。

日本は26年に金利上昇が見込まれる唯一の主要国となる。これは銀行セクターを後押しし、成長への重大な足かせにはならないだろう。

新興市場ではドル安、世界的な低金利、貿易摩擦や地政学的緊張に適応させるための世界のサプライチェーン(供給網)の再編に伴う資金・投資の流入が企業収益を支える可能性がある。

最後に、私の母国である英市場は今年、注目度の高いAI関連銘柄の助けを借りずに米国を上回るパフォーマンスを示している。特に現在のバリュエーションが先進国で最も低水準にあることから、着実で安定したリターンを提供する可能性を秘めている。投資家にとっての課題は、英国に依然漂うネガティブな市場心理を克服できるだけの質の高い英企業の見極めだ。

<脱ハイテク銘柄>

セクター別でも同様の傾向が見られる。米ハイテク株が全てではない。

欧州銀行株の過去5年間のリターンは、現地通貨ベースで超大型ハイテク株「マグニフィセント・セブン(M7)」銘柄を40%ポイント上回っている。にもかかわらず、バブルになっているとの議論は全く出てこない。バリュエーションは引き続き長期平均を下回っており、当社の分析によると欧州銀行セクター全体では今後3年間に配当と自社株買いを通じて時価総額の約24%を株主に還元する見通しだ。

ヘルスケア株は近年、市場平均を下回るパフォーマンスにとどまっている。しかし、需要が景気循環にほぼ影響されないこの伝統的なディフェンシブ(防衛)セクターは、市場が混乱した時期でさえも歴史的に堅調かつ持続的な収益成長を示してきた。

当社の分析によるとヘルスケア株は現在、グローバル株式より28%割安な水準で取引されている。この水準は過去30年間に2度しか観測されていない。いずれの場合でも、その後12カ月間でセクターは20%超のリターンを記録した。

AI関連のテーマでも、過大な価格を支払わずにエクスポージャーを獲得する方法は存在する。AIの電力需要は、データセンターに電力を供給する公益企業を含めてクリーンエネルギーと送電網インフラに投資する必要性を浮き彫りにしている。

重要なのは、クリーンエネルギー株と上場インフラ企業の両方が市場全体に対して割安で取引されている点だ。AI投資は必ずしも高価である必要はない。

AIブームが26年にさらに勢いを増す可能性はもちろんある。特に効率性向上によるリターンがより明確になり始めた場合だ。しかし、高いバリュエーションが市場を不安定に保つ可能性は依然高い。リスクへのエクスポージャーを減らしたい投資家にとっては、多くの選択肢が存在する。

(筆者のヘレン・ジュエル氏は米資産運用会社ブラックロックのファンダメンタル株式部門の国際最高投資責任者(CIO)です。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。
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