Gabriel Rubin
[ワシントン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、未来について「誰にも分からない」というメッセージを持つ。この自明の理は最近いつにも増して重みを帯びており、FRB議長としての8年に及ぶ時間は、パウエル氏に予期せぬ事態においても最悪のケースを想定することを教えてくれた。ただ18日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の発言からは、パウエル氏が金融政策のかじ取りをする期間が残り少ないと改めて認識させられる。同氏の議長としての任期は5月に終わり、後任に指名されたケビン・ウォーシュ元理事が議会での承認を待っている。市場は、パウエル氏の発言を適切に警告として受け止めたようだ。危機を乗り切るのは、同氏が時折そう見せかけてきたほど簡単ではないということを。
米国・イスラエルのイラン攻撃は、パウエル氏が任期中に直面した4回目の経済的なショックと言える。1回目は2020年のコロナ禍、2回目は22年のロシアによるウクライナ侵攻とコロナ禍後の供給ショック、そして3回目は25年4月にトランプ大統領が世界に対して一方的に開始した貿易戦争だ。
現在進行中の「乱気流」がどのような結果をもたらすかは、まだ正確に把握されていないが、原油価格が一時1バレル=100ドルを突破したことで、デリバティブ市場は物価上振れを考慮に入れて、FRBの利下げ見通しを修正した。アトランタ地区連銀によると、先週末時点でFRBが年内に少なくとも1回利下げするとトレーダーが見込む確率は47%と、イラン攻撃開始前の74%から低下。利上げ確率は10%弱から約33%に切り上がった。
不吉なことに、経済の上流部門の物価はイラン攻撃前から上昇加速が始まっていた。18日に発表された2月の卸売物価指数は前年比3.4%、前月比0.7%の上昇で、モノの値上がりが全体を押し上げた。さらにイラン攻撃開始以来、原油価格が40%跳ね上がっており、その影響は来月の指標からようやく顕在化してくるだろう。
パウエル氏は後任者に突き付けられた課題を列挙しただけではない。ホワイトハウスが目指すFRB改革にとって重要な情報(あるいはその情報の欠如部分)を自ら進んで明かした。つまり議長としての任期終了後、28年まで理事としてFRBに残り続けるかどうかは、まだ決断を下していないということだ。
代わりにパウエル氏は、いかなる決断も組織にとって最善の利益になると自身が信じるものに基づいて行われると述べた。専門家は、トランプ政権がFRBの政策に影響を及ぼし、FRB当局者に対する支配力を強めようと画策している点を踏まえて、大きな状況の変化がない限り、パウエル氏がFRBにとどまりそうなサインだと受け取っている。
ただパウエル氏が実際FRBに残るか、ビーチで過ごすかにかかわらず、出されたメッセージは明確だ。これらの問題はウォーシュ氏が解決すべきだ、という点に尽きる。
●背景となるニュース
*FRBは18日に終了したFOMCで政策金利据え置きを決定し、パウエル議長はエネルギー高に起因するインフレ期待の高まりに懸念を表明した。nL6N406173
*パウエル氏の議長としての任期が終わる5月15日の前に開催するFOMCは残り1回。ただ同氏は、後任に指名されたケビン・ウォーシュ元理事の上院による承認手続きが5月15日を過ぎても完了しない場合、議長代行としてとどまる意向を示した。2028年まで任期がある理事としてFRBに残るかどうかは、まだ決めていないと述べた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)