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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕 「移民ネットゼロ」経済、高齢化社会では危険な側面

ロイターFeb 9, 2026 4:59 AM

Jon Sindreu

- 米国と英国は移民の流入をますます抑制しており、移民を純増させない「移民ネットゼロ」構想が現実のものとなる可能性がある。こうした政策が直ちにもたらす弊害としては、米国での暴力的な移民摘発や英国での外国人医療従事者不足などが知られている。しかし、より目立たない長期的な危険も存在する。政府が急速な高齢化社会を支えるために必要な投資を怠る恐れだ。

英経済社会研究所(NIESR)は今週、英国の人口増加が止まり、2030年から40年にかけて人口が約7000万人で頭打ちになるとの予測を発表した。これは十分にあり得るシナリオだ。25年には英国の出生者数が死亡者数とほぼ同数になり、移民の純流入数は20年以来の最低水準に落ち込んだ。これは主に、反移民政党「リフォームUK」の支持率上昇に押され、政府が就労ビザ規制を強化したことが原因だ。NIESRは、人口が7400万人に増えるとの想定に基づく政府の経済予想に比べ、人口の停滞が続けば40年の国内総生産(GDP)は3.6%小さくなる試算している。しかし重要なのは、一人当たりGDPは2%高くなる点だ。

これは直感に反する。大半の研究は、移民増には経済活力の向上と税基盤の拡大を通じた恩恵が存在すると結論付けている。しかしNIESRの試算は可能性の高い帰結を反映している。すなわち、移民停止は、企業投資を抑制するよりもずっと急激なスピードで、将来の労働力を縮小させるのだ。また企業は、人手不足を受けて労働者に高い賃金を支払うよりも、機械や人工知能(AI)を活用するインセンティブを持つ。これは生産性の伸びを押し上げるはずだ。

とはいえ、移民が労働年齢人口の新たな供給源ではなくなるにつれ、長期的には高齢化が問題化する。NIESRは、福祉支出の増加により2032年以降に英国の財政赤字は急拡大を始めると指摘している。多数の退職者を、減少する働く世代の納税が支えることになるからだ。

こうした財政懸念には増税で対処できるかもしれない。しかし経済成長も期待外れに終わる恐れがある。当初は労働力不足が生産性向上をもたらすかもしれないが、最終的には企業の商品・サービスを消費してくれる市場が縮小するだろう。消費者と政府の支出は、高齢者介護のように自動化が難しい分野へシフトする。国際通貨基金(IMF)の研究が示唆するように、その結果、企業は最終的に労働者一人当たりの資本投資ペースを鈍化させ、生産性を損なうことになる。

NIESRのエコノミストらは確かに、高齢化社会ではロボット投資が増えて生産性を補うと分析している。だがこれは自動的に起こるわけではない。米国はAIブームの成果を期待できるが、産業基盤や技術基盤が弱い国々は苦戦する。欧州連合(EU)を離脱以降、設備投資が枯渇している英国や、急速に脱工業化が進む欧州諸国もこれに該当する。企業投資を後押しする野心的な政府政策を実施しない限り、反移民政策は意味をなさないかもしれない。

●背景となるニュース

* 米国勢調査局が27日発表したデータによると、2025年6月30日までの1年間で、米国の人口は180万人(0.5%)増え3億4180万人となった。増加率は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降で最低の水準に鈍化した。移民の大幅な減少が影響したとみられる。nL6N3YT058

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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