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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕次期FRB議長指名のウォーシュ氏、「変節」ぶりが疑心暗鬼生む

ロイターFeb 2, 2026 12:05 AM

Gabriel Rubin

- ケビン・ウォーシュ氏が次期米連邦準備理事会(FRB)議長になるとして、果たしてどの「ウォーシュ」が、どんな「FRB」を率いることになるのだろうか。FRBに影響を及ぼそうと、ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長とケビン・ウォーシュ元FRB理事の2人の「ケビン」の間で煮え切らない態度を取りつつ、前例のない法的圧力まで仕掛けてきたトランプ大統領は、ついにパウエルFRB議長の後任を選んだ。ウォーシュ氏が示している現行政策への批判は、政権の気まぐれな意向と実に都合よく一致している。しかし最近の低金利支持の姿勢は、インフレリスクに対して長年強硬な立場を取ってきた彼の従来の考え方と矛盾する。こうした不確実さが、結果的にパウエル氏に、もうしばらく職にとどまろうと思わせる可能性もある。最も望ましいのは、制度的な歯止めと、過敏に反応する市場の存在が、FRB新トップの振る舞いを一定程度抑え込むことだ。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領の下でFRB理事を務めたウォーシュ氏自身、将来を見通すことには苦労してきた。2008年にリーマン・ブラザーズが破綻した翌日、同僚が拡大する危機の封じ込めに奔走する中、ウォーシュ氏は「インフレ面での懸念を手放す準備はまだできていない」と言い放った。09年には米国の成長が鈍く、失業率が急上昇し、物価上昇率が1%まで低下していたにもかかわらず、利上げを再開すべきだと主張した。

一方でウォーシュ氏は、JPモルガン・チェースによるベアー・スターンズ買収や、保険大手AIGへの政府救済などを進めた功績によって評価も得ている。量的緩和を巡るウォーシュ氏の批判は当時のベン・バーナンキ議長をいら立たせたが、それにもかかわらず両者は緊密な協力関係を築いた。トランプ政権1期目にFRB議長の座をパウエル氏に奪われてからというもの、ウォーシュ氏はパウエル氏に対して辛辣な言葉を浴びせ続けてきた。

ウォーシュ氏は、新型コロナウイルスのパンデミック後のFRBによるインフレ対策の成績を酷評し、さらに多様性や気候変動など本来の役割を超えているとみなされがちな対応にも強い不満を示した。トランプ氏が低金利の実現に執着していることが明確になるにつれ、ウォーシュ氏は姿勢を変え、FRBのバランスシート縮小と同時に利下げすれば経済の過熱は抑えられると主張するなど、金融緩和の擁護者へと自己改造を図った。こうした理屈のねじれた主張はトランプ氏の支持を得ることには成功したかもしれないが、金利政策を合議で決めるFRB理事たちにとっては、格好の批判対象になりかねない。

詰まるところ、FRBの信認にとって最大の試金石は、ホワイトハウスからの圧力をはねのけられるかどうかだ。パウエル氏は、FRBを従属させようとするトランプ氏の異例の動きに対抗するため、これまた異例の措置を取ってきた。ウォーシュ氏の「変節」ぶりは、次期議長が本当に独立して判断しているのか、それともホワイトハウスの意向に従って動いているだけなのか、同僚たちに警戒心を抱かせかねない。

実はパウエル氏自身も、政権とFRBのせめぎ合いを左右する当事者になり得る。議長としての任期は5月で終わるが、理事としては28年まで在任できる。もしパウエル氏が理事にとどまれば数年間は欠員が生じないため、トランプ政権がFRBをさらに変える機会はほとんどなくなる。ただし、これは最高裁がリサ・クック理事の解任を阻止し、司法省がパウエル氏に対する根拠薄弱な刑事捜査を取り下げることが前提だ。もし最高裁が歯止めにならず、司法省も捜査をやめなければ事態は一変する。その場合はウォーシュ氏の議長指名さえ危うくなりかねず、共和党のティリス上院議員は承認阻止も辞さない構えだ。

債券市場は、たとえ政治に取り込まれたFRBであっても、当局が完全には支配できない長期金利を高止まりさせることで、一定の歯止め役を果たすかもしれない。ウォーシュ氏が学者としての原点に立ち返り、事実に基づいた独立した金融政策を追求する可能性もある。だが、その期待を抱かせるには、指名候補としての最近の実績は心もとない。

●背景となるニュース

*次期FRB議長にウォーシュ氏指名、トランプ氏「利下げ確信」nL6N3YV16R

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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