
Kevin Yao
[北京 21日 ロイター] - 中国はサービス消費喚起に向けた新たな政策措置の導入を計画している。介護や医療、娯楽といった分野への支出が、低調なモノの消費を穴埋めしてくれるとの期待からだ。ただ複数の専門家は、そうした計画の成否は家計所得を増やし、社会福祉を拡充できるかどうかにかかっている、とくぎを刺す。
大規模投資と輸出に依存する従来の経済構造を消費主導型に転換しようとしている中国政府は、労働集約的なサービス分野がその鍵を握るとみている。
そこで政策アドバイザーや専門家から聞こえてくるのは、インセンティブ設定や市場障壁引き下げ、供給不足解消のための高成長セクターへの投資だけでなく、所得を増大させて社会のセーフティーネットを強化するより根源的な改革が必要不可欠になる、という意見だ。
中国のサービス分野は、需要に対して供給超過となりがちな製造業と対照的に、慢性的な供給不足に直面している。その理由として発展の遅れと長年にわたる製造業偏重の政策対応が挙げられる。
ある政策アドバイザーは「政策立案者はその大きな潜在力ゆえにサービス消費をより重視しつつある。だがサービス分野の拡大は、経済構造転換ペースに足並みをそろえる形で緩やかな歩みとなるだろう」と述べた。
中国指導部は、向こう5年で経済活動に占める家計消費の比率を「著しく」高めると約束。大半の政策アドバイザーは、現在約40%となっている比率を2030年までに45%へ上昇させるべきだと考えている。nL6N3YL0HA
また指導部は、教育や医療、社会保障への支出拡大を通じて「人への投資」を実施すると表明し、各家庭への支援をより拡充させて家計の購買力を高める意向をにじませた。
実際、中国の家計は大型耐久消費財への需要が頭打ちとなり、高齢者介護から旅行、エンターテインメントまでサービスへの支出を増やす方向にある。ほとんどの家庭にはもはや十分なモノが行き渡り、1人当たり国内総生産(GDP)は1万4000ドルに近づいている。この変化は中国がサービス主導の消費モデルに向かう動きを物語るものだ。
HSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレッド・ニューマン氏は「再調整が進んでいるのは、経済における消費と投資の相対的な重要性という部分で、消費内容がモノかサービスかではない。とはいえ、経済発展に伴う家計所得増加や各世帯の高齢化が進むとともに、サービス需要はモノへの需要よりも急速に成長していくはずだ」と指摘した。
2025年12月のモノの小売売上高は前年同月比0.9%増と、22年12月以来の低い伸びを記録。一方、25年のサービス売上高の増加率は5.5%と、モノの売上高の3.7%を上回った。
25年の1人当たり消費に占めるサービスの比率は46.1%と、入手できるデータとして最も古い14年の40.3%から高まっている。
中国のGDPにおける家計消費の比率は世界平均より約20ポイント低く、投資の比率は逆に20ポイント前後も高い。
こうした点からINGのチーフ中華圏エコノミスト、リン・ソン氏は「家計消費の比率を高めることが現実的だ」と話す。しかしそれは政策面でどの程度コミットされるかに左右されるという。
<スピード上がらない政策転換>
中国政府は消費喚起のための補助金制度を見直し、対象をモノだけでなく高齢者介護や飲食、エンタテインメント、旅行などにも広げることを検討しているもようだ。
高齢者や介護施設などのサービス事業者向け補助金、在宅介護用バウチャーなどに財政支援を行うとみられている。
複数の当局者は、消費促進のための有給休暇拡充やクルージングなどの豪華レジャーと関連施設に対する規制の緩和にも目を向けつつある。
投資家らは、中国政府が今年どの程度の規模で公共サービスに財政資金を投入するか、所得や社会福祉の改革がそのあとに続くのかに注目している。
それでも政府は製造業優先方針を維持するので、政策転換のスピードは上がらないだろう。
S&Pグローバル・レーティングスのチーフ・アジア・エコノミスト、ルイス・クイス氏は「私の考えでは、地方政府を含む多くの政策立案者はまだ製造業に軸足を傾けている。その一因は製造業活動の方が税収を確保しやすいからだ」と述べた。
売上高の急速な落ち込みを避ける上で、政府はモノを重視する消費刺激策を徐々にしか縮小することはできない。
ゴールドマン・サックスは、25年に3000億元だった買い換え消費向け補助金は、今年約2500億元に減少すると予想している。
<供給不足>
25年に高齢者介護とサービス消費を後押しするための低利資金供給制度を打ち出した中国人民銀行(中央銀行)は、サービス分野にとって不十分な供給が依然として最大の問題だと警告している。
申万宏源証券は、中国のサービス分野向け投資が3兆3000億元不足し、所得水準が同程度の国に後れを取っていると試算する。
中国では高齢者1000人当たりの介護ベッド数はわずか30床と多くの先進国を下回り、不足数は極めて深刻だ。このため、市民も自己防衛に動き、例えば25年に銀行を退職したリリー・ヤンさん(56)は北京の高級介護施設の入居枠を確保しようと200万元を投じて保険連動型プランに加入した。この施設は既にほぼ満床状態となっている。
年金受給額が少ないほとんどの退職者は、自宅で老後を過ごすことが唯一の選択肢であり続けている。
北京在住の女性(68)は、自分と夫の月収が1万元だと明かした上で、政府にもっと手ごろな価格の介護施設を増やしてほしいと訴えた。その上で「私たちに介護施設に入る余裕はない。全く現実的ではない」と嘆いた。