tradingkey.logo

COLUMN-中堅国が対米デリスク戦略、「トランプ離れ」加速

ロイターJan 28, 2026 5:35 AM

Mike Dolan

- トランプ米大統領による先週のグリーンランド問題を巡る関税を使った脅しとその後の急激な方針転換は、世界の「ミドルパワー(中堅国)」にとって分水嶺となったのではないか。中堅国にとっては、米国の関与の有無にかかわらず、グローバル化の再起動が昨年の貿易ショック時に比べてはるかに現実味を帯びてきた。

トランプ氏は今年に入ってから関税を巡る方針を変え、長年の通商上の不満を表明する手段として用いるだけでなく、領土的・軍事的な圧力をかける道具としても使うようになった。そして今回初めて、こうした戦略が強硬な抵抗と、現実的で効果のある報復に直面し、結果として後退を余儀なくされた。

同様に重要なのは、米国が保護主義へと後退し、通商面でますます攻撃的な姿勢を強める一方、欧州やカナダなどの経済圏が自らの手で貿易自由化を着実に進めている点だ。

トランプ氏の狙いが多国間のルールに基づく貿易体制から米国を切り離し、純粋に取引ベースの体制に移行させることにあるのだとすれば、もはやトランプ氏を思いとどまらせることができると考える人はほとんどいない。

しかし他の国々は米国に追随しない決意を固めているように見える。そして、トランプ氏が解体しようとしているものの多くを、なお維持できると信じている。

先週の世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)でカナダのカーニー首相は、自らが「ミドルパワー」と呼ぶ国々の旗手として急速に存在感を高め、トランプ氏のビジョンに対する明確な代替案を示した。たとえルールに基づく世界秩序が終焉を迎えつつあるとしても、カナダなどの「ミドルパワー」が連携すれば米国の覇権による被害を避けることができると強調し、「もはやルールが守ってくれないのなら、自ら守らなければならない」と訴えた。

中国の習近平国家主席との通商交渉から戻ったばかりのカーニー氏に対する「ご褒美」としてトランプ氏が再び放ったのは、カナダ製品に100%の関税を課すという荒っぽい脅しだった。

しかしこうした動きはカナダだけにとどまらない。

グリーンランド問題を巡ってようやくその強大な通商力を発揮した欧州連合(EU)も、世界各地での貿易交渉を加速させている。南米南部共同市場(メルコスル)との25年越しの交渉や、インドとの二国間交渉がその例だ。

EUは昨年、メキシコ、インドネシア、スイスとも協定の締結にこぎ着けた。次はベトナムが控えている。

米国との二国間交渉が破綻したインドも昨年、英国およびニュージーランドとの間で貿易協定の最終合意に達した。カーニー氏は3月第1週にインドを訪問し、ウラン、エネルギー、鉱物、人工知能(AI)分野での協定に署名する予定だ。

こうした動きは枚挙にいとまがない。

<グローバル貿易機関>

米外交問題評議会(CFR)のマイケル・フロマン会長は先週ダボスから寄稿し、カナダや欧州諸国が米国を見捨てるのではなく、「有志連合」を模索し、新たな地政学的均衡を築こうとしていると指摘。「デリスキング(リスク低減)という言葉は、もともと欧州委員会のフォンデアライエン委員長が対中戦略を説明するために使ったが、今や米国に対して用いられている。貿易や金融資産も時に含めた米国からの分散化や、自前の防衛能力の構築、長年議論されてきた改革面の課題が最優先事項になっている」と論じた。

これは「米国抜き」の新たな多国間ルール秩序というよりも、緩やかな枠組みと映るかもしれない。しかし方向性は、昨年の貿易の嵐のさなかに影響力のある人物らが行った主張と重なる。

元国際通貨基金(IMF)・世界銀行高官のアン・クルーガー氏は昨年、世界貿易機関(WTO)加盟国が新たな「グローバル貿易機関(GTO)」を創設し、EU、カナダ、環太平洋パートナーシップ(TPP)諸国を、WTO協定と紛争解決制度の下で結び付ける構想を提示。第1次トランプ政権下で米国がWTO上級委員会の人事を阻止した際、47カ国が米国抜きでも紛争解決を可能にする代替制度を設けたことを指摘した。世界の輸出に占める米国の比率は10-12%に過ぎないが、米国を除くGTOなら約60%に達するという。

クルーガー氏はプロジェクト・シンジケートへの寄稿で「その集団的な交渉力は米国をはるかに上回り、トランプ氏の分断統治戦術を無力化するだろう。さらに重要なのは、こうした結束が、最終的には米国の政策担当者をルールに基づく協調へと引き戻す可能性がある点だ」と主張した。

CFRのフロマン氏はダボスで、指導者たちがトランプ氏の考えを変えさせて誤りを説得しようとする戦略を放棄するというおおまかなコンセンサスを感じたという。「彼らはその代わりに、互いに二国間、あるいは複数国間で協力し、米国との関係で影響力を行使する方法や、米国への依存を減らす道を探ることに集中している」

では、こうした動きは世界経済や国際的な投資にとって何を意味するのだろうか。

IMFの最新の報告によると、昨年の混乱が世界経済に与えた表面的なダメージは驚くほど小さいようだ。しかし複数の逆風が交錯しており、状況をすっきりと読み解くのは難しい。世界秩序のこうした地殻変動は、ショックとして一気に現れるのではなく、何年もかけて徐々に浸透し、ようやく測定可能になる可能性が高い。

市場にとっては、国境をまたぐ投資や、「米国抜き」の貿易体制におけるドルの役割をこれまで以上に注視する必要があるだろう。

長年の貿易黒字の見返りとして積み上がってきた米国資産に対する莫大な海外のエクスポージャー、そしてホワイトハウスが貿易戦略を後押しするためにドル安を望んでいることを隠そうともしない状況を踏まえると、世界各国は何とか混乱をかき分けて進むことはできるかもしれない。

しかしそれはウォール街にとって決して明るい見通しとは言えない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

関連記事

KeyAI