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COLUMN-チャートで見る今年の卑金属相場、関税や供給リスクで「地殻変動」

ロイターDec 24, 2025 3:00 AM

Andy Home

- (コラム)7つのチャートで見る今年のLME卑金属相場、供給問題と米関税が焦点

[ロンドン 23日 ロイター]  ロンドン金属取引所(LME)の卑金属は、供給問題と米政府の関税措置による混乱によって相場の動きが決定付けられた1年となった。

需要はバラ色とは程遠かったが、サプライチェーン(供給網)に支障が生じたため、6つの卑金属で構成されるLME指数.LMEXは2022年以来の最高値に上昇した。22年はロシアがウクライナに侵攻した年で、同指数は過去最高値を付けていた。

今年の金融市場は、トランプ米大統領が「相互関税」を発表した4月に急落した後、持ち直した。しかし米政府が関税措置で特にアルミニウムを標的にし、銅に対する関税もちらつかせたことから、卑金属の取引パターンは「地殻変動」を起こした。

関税措置によって個々の金属の供給リスクも複雑さが増し、金属ごとに価格の動きが大きく乖離(かいり)した。

<銅の二重人格>

LMEの銅3カ月先物CMCU3は今年、次々と過去最高値を更新して1トン=1万2000ドル水準をうかがった。(編集注:23日に1万2000ドルの大台を突破した)

米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の銅先物HGc1は、精練銅に輸入関税が課される可能性が織り込まれたため、さらに高い水準まで上昇。トランプ政権は決定を年央まで先延ばししたが、課税の脅しだけでも大きな混乱が生まれた。

世界中で供給過剰となった銅が米国に引き寄せられた結果、CMEの銅在庫は数年ぶりの高水準を記録した一方、その他の国々では銅が不足した。銅は今なお、国によって供給過剰と供給不足に分かれている。

トランプ関税が二転三転する中、今年はCMEとLMEの銅価格の裁定取引が急増した。トランプ氏が態度を決めるまで、米関税が精練銅の世界的フローを決定し続けるだろう。

<スズにファンド参入>

今年見出しを飾ったのは銅だったが、最も輝いたのは複数の供給不安に見舞われたスズだった。

スズは、産出国がコンゴ民主共和国やミャンマーのワ州など高リスク地域を含む一握りの場所に集中していることに問題がある。

スズ取引に参入するファンドが増えたことも、スズ価格の変動を大きくしている。モノのインターネット(IoT)時代にスズが脚光を浴びるとの見通しが、投資家のレーダーにかかったためだ。

<アルミニウム「キャップ」と「ギャップ」に注意>

LMEにおいて今年3番目に強かった卑金属がアルミニウムだ。世界第3位の生産国である中国での生産が、政府の生産能力制限(キャップ)に直面しているとの認識が広がったことが背景にある。

アルミニウムは「20年間で最大の供給不足に向かって夢遊病のように進んでいる」というシティの予測に全員が同意しているわけではないが、中国以外でのアルミ製錬プロジェクトにこれほど注目が集まったのは久々なのも確かだ。

アルミ取引はロシア産金属への制裁によって既に混乱していたが、米輸入関税が原因でさらに地域ごとの分断が進んだ。米国渡しのアルミ価格は、LME価格に対するプレミアムが過去最高の1トン当たり1967ドルに達した。

<亜鉛のサプライズ>

LMEの亜鉛市場は10月に激しい供給不足に見舞われた。

今年は鉱山からの新たな亜鉛供給がサプライチェーンにあふれ、供給過剰になると見られていた。しかし供給過剰になったのは中国だけだった。

世界の鉱山における亜鉛生産は1―10月に前年比6.5%、精練亜鉛の生産は2.9%、それぞれ増加した。しかし西側諸国の精練亜鉛生産は、予想外の施設閉鎖や操業中止により2.2%減少した。

<鉛は供給過剰>

鉛の供給は不足しておらず、近い将来に供給不足に陥る可能性も小さい。

今年は100万トン以上の鉛がLME倉庫を行き来し、登録済みの在庫は差し引き1万6425トン増えた。

<ニッケル、インドネシア生産拡大で下落>

インドネシアで生産ブームが続いたおかげで、ニッケル在庫は急増し、世界的に供給の伸びが需要の伸びをはるかに上回った。

良いニュースは、中国で「報告されていない戦略的在庫積み増し」(マッコーリー銀行)が無ければ、取引所の在庫はさらに大きかっただろう、ということだ。悪いニュースは、LMEがインドネシアの新たなニッケルブランドを年間5万トン規模で承認したことだ。

ニッケル相場は現在、インドネシアが来年生産を抑制するとの期待から上昇している。つまり今、ニッケルについて知るべきことはインドネシアの動向だけだ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。
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