Gabriel Rubin
[ワシントン 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 南アフリカからマレーシアまで、ホワイトハウスと貿易合意を目指していた各国交渉担当者たちに与えられた報酬は、さらに3週間続く極度の緊張状態だ。トランプ米大統領は7日、国別の貿易合意を結ぶ期限を再び延長し、今回は8月1日までとした。世界の指導者たちに来月から輸出品に25%から40%の関税を課すと宣言した書簡を送り付けた。場当たり的とも言えるこうした要求は、トランプ氏の「解放の日」の脅しを思い起こさせ、合意に取り組む各国にとって、先が思いやられる状況だ。
日本と韓国は警戒すべき事例だ。トランプは4月の関税政策に関する発表で、日本に24%と韓国に25%の関税を課すとした後、交渉のために発動を延期した。その後、トランプ氏は、日本が米国産のコメや自動車を十分購入していないと怒りをぶちまけ始めた。しかし、日本が輸入する無関税のコメは半分が米国産だ。しかも米国務省によると、米国のコメの輸出額は全体でも20億ドル程度で、日本の観光客が2019年に米国に落とした130億ドルに比べればごくわずかだ。にもかかわらず、トランプ氏とレビット米大統領報道官はこの一つの問題にこだわっている。
韓国はこうした気まぐれに応えられなかった代償を払っている。韓国は12年に米国と自由貿易協定を締結したにもかかわらず、トランプ氏の今回の痛烈な非難を全く防げなかった。トランプ氏の政策は今や韓国の大手メーカーが米国内で生産を拡大する努力を鈍らせる可能性がある。最近の電気自動車(EV)補助金の削減はバッテリーメーカーのSKオンや自動車メーカーの現代自動車のような企業に打撃を与えるかもしれない。
経済規模の小さい国に対する関税の脅しは特に対応が難しい。例えばラオスを見てみよう。ラオスが24年に米国から輸入した産品の金額は4000万ドル。これに対してラオスから米国に輸出した産品の金額は8億0300万ドルだった。米国にとってこの貿易赤字額は、1.2兆ドルという総額からすれば微々たるものだが、160億ドル規模のラオス経済にとって40%の関税の影響は非常に大きい。
さらに「合意」に達した国も、得られたのは、実際に課されていない関税率の引き下げくらいで、そのほかは漠としている。ベトナムを見てみよう。トランプ氏はベトナムからの輸入品に対する関税を20%に下げたものの、他国からベトナムを積み替え地とした製品の関税率は2倍に設定した。合意していない日本と韓国も7日の発表によると、25%の関税率に加えて迂回輸出について同様な措置が取られているという。ホワイトハウスによれば、ベトナムは米産品に対する関税をゼロにした。
こうした中、新興国グループBRICS諸国も10%の追加関税の脅しを受けるなど、新たな懸念材料が浮上している。こうした混乱が一体いつになれば終わるのか分からない。どの国にとっても最良の交渉結果と思えるのは、英国の枠組み合意かもしれない。この枠組みの成果は、貿易易障壁をある程度緩和したくらいだが、トランプ氏が今後、考えを変えないと踏んでいなければ、現時点では小さな勝利だ。
●背景となるニュース
*日韓に25%関税、トランプ氏が貿易相手国に書簡 交渉期限8月1日にnL6N3T40OK
*トランプ米大統領が日本に25%関税を通知した書簡全文nL6N3T40OT
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)