
Sebastian Pellejero
[ニューヨーク 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国企業はアクティビスト(物言う株主)に対して弱腰過ぎる。2025年だけでも、エリオット・マネジメントやジャナ・パートナーズといったアクティビストのヘッジファンドに取締役ポストを明け渡した企業が過去最高の52社に上った。AT&TT.NからセールスフォースCRM.Nに至る多くの企業が、大きな目で見れば「戦争より和解が安全」との結論に至った。だが長期的な実績を見ると、この決断は代償を伴う。
「デタント(緊張緩和)」には分かりやすい魅力がある。おおっぴらな争いによるダメージを避けられるだけでなく、HFRのデータ分析によるとアクティビスト投資家は2022年以来、業界平均より2ポイント以上高い年率12%のリターン(手数料を差し引いたベース)を生み出している。これを見る限り、アクティビストは他の株主にとっても株主価値の向上をもたらす方法を知っており、内部に招き入れる価値がありそうだ。
しかし、より広い視点で見ると、実績はもっと弱い。過去10年間の純リターンは年率6%程度で、合併・買収(M&A)絡みの価格変動を利用する戦略を採った同業他社や、ヘッジファンド業界全体のリターンに見劣りしている。
とはいえ、最高経営責任者(CEO)らはプレッシャーを感じている。アクティビストは昨年、企業取締役会ポストを巡る争いの約4分の3に勝利した。これは過去レンジの上限に近い。さらには、32人のCEOがアクティビストに揺さぶりをかけられてから1年以内に退任している。
結論を言えば、アクティビストは「緊急事態」を作り出すのは得意でも、持続的な恩恵をもたらすのは難しい。ビル・アックマン氏やダニエル・ローブ氏といったアクティストが来訪すると、その衝撃で企業統治を巡る対立は取引(トレード)が可能な事由へと変貌する。しかし「和平」の後には厳しい現実が訪れる。2010年から24年の事例634件を対象とした最新調査によると、アクティビストと和解した企業の株価はその後3年間で、S&P500種総合指数.SPXを平均7%アンダーパフォームしている。
中央値を見ると約5%のアンダーパフォームと、もう少しましなので、大半の和解は少なくとも「惨劇」には終わっていない。だが大した助けにもなっていない。アクティビストとの和解が価値の創造ではなく、単にダメージコントロールに過ぎないのであれば、なぜ株価が低迷している企業は反射的に和解してしまうのだろうか。
和解の成果を正確に評価しにくい場合もある。つまりアクティビストが声を上げた時点で、多くのCEOはすでにコスト削減や資産売却、再建計画の準備に着手しているからだ。セールスフォースやウォルト・ディズニーDIS.Nの事例がそれに当たる。同時に、株価の上昇は必ずしも根本的な問題解決の証明にはならない。
ただ、アクティビストの来訪が間違いなくもたらすのは「焦り」だ。アクティビストと和解してから3年以内に身売り先を見つけた企業の株価は、市場平均を15%以上アウトパフォームしている。
こうした現実は説得力を増している。投資銀行ラザードの調査によると、北米では「ディール主導型」のアクティビストキャンペーンが2025年上半期から下半期にかけて2倍以上に急増した。昨年末ごろに起きたアクティビストと企業の闘争のうち、実に3分の2近くが事業分割や戦略的見直しを前提としたものだった。ロイターが先月報じたところでは、M&Aが活発化しているため、企業にM&Aを迫るファンドが増えると予想されている。
最近の事例は、こうした変化を如実に物語っている。例えばエリオットは石油企業フィリップス66PSX.Nに対し、事業ポートフォリオの簡素化を求めた。スターボード・バリューは、ジョンソン・エンド・ジョンソンJNJ.Nから分離独立して1年足らずのケンビューKVUE.Nにブランドの見直しを迫った。成長が鈍化したサイバーセキュリティー企業のラピッド7RPD.Oは、ジャナ・パートナーズから身売りの検討を促された。
短期的には、身売りを探ることは慎重な経営判断のように見える。しかし、より長いスパンで見れば「焦り」の表れに過ぎない。本来ならば長年にわたる地道な取り組みで得られるはずの利益よりも、小さな利益を確定してしまっているのだ。確実に価値を上げられる道が「オークション」(身売り)である時、取締役会は妥協を選ぶかもしれない。
問題は、単に摩擦を避けるために無条件降伏すれば、「辛抱強い資本」の不満を招くだけ、ということだ。ほとんどの予期せぬ客人がそうであるように、後に残るのは他の人が片付けなければならない混乱だ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)