
Marc Jones
[ロンドン 31日 ロイター] - 大半の投資家は、2025年がいつもと違う様相になると承知していた。米大統領にトランプ氏が復帰したからだ。ただ値動きがこれほど激しくなり、実際に起きた結果を正確に予測できた人はほとんどいなかった。
世界の株式.MIWD00000PUSは、トランプ氏が「相互関税」を発表した4月を底にして値を戻し、結局年間で21%上昇。過去7年で6度目の年間2桁上昇率を記録した。一方で他の市場に視線を向けると、さまざまなサプライズが目に飛び込んでくる。
究極の安全資産とされる金XAU=の価格は年間上昇率が65%と、1979年の石油ショック以来の大きさになった。逆に主要通貨に対するドル指数.DXYは10%弱、原油価格は約18%それぞれ下落した。
超大型ハイテク7銘柄(マグニフィセント・セブン)は、人工知能(AI)ブームの申し子とされる半導体大手エヌビディアNVDA.Oが25年10月に初の時価総額5兆ドル企業になった後、輝きがやや薄れたように見えた。暗号資産(仮想通貨)のビットコインも突然時価総額の33%ほどを失った。
ダブルラインのファンドマネジャー、ビル・キャンベル氏は25年を「変化の年、数々のサプライズの年」と評しつつ、大きな動きは全て貿易戦争、地政学、債務という問題の絡み合いに起因したとの見方を示した。
キャンベル氏は「もしもあらかじめ、トランプ氏がこれほど強硬な通商政策を打ち出し、今のような順序で進めると聞いていたなら、バリュエーションが現在ほどタイト、あるいは高水準になるとは予想しなかった」と話した。
欧州の武器メーカーの株価.SXPAROが年間で56%上昇したのも、トランプ氏のおかげだ。同氏が米国は欧州に対する安全保障の規模を後退させると示唆し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に独自の軍備強化を迫ったことが影響している。欧州では銀行株の上昇率も1997年で最高に達した。
貴金属は金以外にも、銀XAG=とプラチナXPT=の価格がそれぞれ145%と125%の上昇となった。
米30年国債利回りUS30YT=RRは、トランプ氏が打ち出した大規模な減税・歳出計画を受け、5月に5.1%超と2007年以来の水準に上昇した。足元では4.8%まで戻しているものの、いわゆる「タームプレミアム」の拡大によって短期ゾーンとの利回り差は再び広がっている。日本の30年国債利回りも過去最高水準を記録した。
世界の債券市場で対比すべき点は、ボラティリティー.MOVEが過去4年で最低になっている一方で、自国通貨建ての新興国債は09年以降最高の年だったことだ。
債務構成の一翼は、人工知能(AI)も担っている。ゴールドマン・サックスの推計によると、大手のAI「ハイパースケーラー」は25年に4000億ドル近くを投じ、26年は約5300億ドルを支出すると見込まれる。
<通貨の勝ち組は>
ドル下落に伴ってユーロEUR=EBSは2025年に対ドルで約14%、スイスフランCHF=EBSは14.5%それぞれ上昇し、中国人民元CNY=CFXSは1ドル=7元の壁を突破した。円は対ドルで最終的にほぼ横ばいだった。
トランプ氏が再びロシアのプーチン大統領寄りの姿勢になったこともあり、ルーブルは40%の上昇となった。
ポーランドズロチ、チェココルナ、ハンガリーフォリントは15-21%の上昇幅。メキシコペソとブラジルレアルは、ともに米国との貿易摩擦を巡る一連のドラマを乗り越えて2桁の上昇率を達成した。
JPモルガンの新興国債券戦略調査責任者を務めるジョニー・グールデン氏は「これは短期的な事象と考えていない。14年にわたって続いてきた新興国通貨の弱気相場は転換期に入ったと思う」との見方を示す。
アルゼンチンも際立った存在になっている。同国の市場はミレイ大統領の与党が9月に地方選で敗北すると打撃を受けたが、その数週間後にトランプ氏による200億ドルの支援表明がミレイ政権の議会中間選挙における圧勝をもたらし、地合いが一変した。
仮想通貨の世界では、トランプ氏がミームコインを立ち上げ、交換所大手バイナンス創業者のチャンポン・ジャオ(趙長鵬)氏に恩赦を与えた。ビットコインBTC=は10月に一時12万5000ドルを超えて過去最高値を付けたが、その後8万8000ドル未満まで急落した。
<26年も波乱の幕開けか>
26年も穏やかな滑り出しにはならないだろう。
トランプ氏は既に11月の議会中間選挙に向けて動き始めており、間もなく米連邦準備理事会(FRB)の次期議長を指名する見通しだ。この人事はFRBの独立性を大きく左右する可能性がある。
投資家は、中国経済が成長を維持できるかにも注目するだろう。イスラエルは10月末までに総選挙を実施する予定で、風前の灯火となったパレスチナ自治区ガザの停戦が焦点になり続けるとみられる。ウクライナ戦争の終結は依然として極めて困難で、ハンガリーではオルバン首相が4月にこれまでで最も厳しい選挙に直面する。コロンビアとブラジルでは5月と10月にそれぞれ重要な選挙が始まる。
その上にAIに関する未知の要素がそろっている。
サトリ・インサイツ創業者のマット・キング氏は、26年に向けて市場はバリュエーションの面で「驚くべき」状況にあり、トランプ氏のような指導者たちは景気刺激策や減税を通じて有権者にお金を配る「口実を探している」と指摘する。
キング氏は「緩和マネーでできることの限界に近づいているというリスクが常に存在する。既にその兆しは出現し始めている」とし、債券市場におけるタームプレミアム拡大、ビットコインの急落、金の上昇がそうした兆しだと言及した。