[7日 ロイター] - トランプ米大統領は7日、半導体大手インテルINTC.Oのリップブー・タン新最高経営責任者(CEO)が直ちに辞任することを求めた。中国企業とのつながりから「重大な利益相反がある」と主張した。
トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)に「この問題に他の解決策はない」と投稿。インテルの株価は3%安で取引を終えた。
米共和党のトム・コットン上院議員は6日、インテル会長宛てに書簡を送り、タン氏の中国企業とのつながりや、CEOなどを務めたことのあるケイデンス・デザインCDNS.Oによる輸出規制違反問題への関与について説明を求めた。
また、ロイターは4月、タン氏が設立または運営するベンチャーファンドを通じて多数の中国企業に投資し、一部は中国軍と関連していると伝えた。
ホワイトハウス当局者は「トランプ大統領はわが国の国家・経済安全保障の維持に引き続き全力を尽くしている。これには、米国民が信頼できる人物が最先端分野の象徴的な米企業を率いるようにすることも含まれる」と述べた。
今年3月にCEOに就任したタン氏は、人員削減と計画中の製造工場の建設中止によるコスト削減を目指し、大規模な戦略の見直しを進めている。経営陣の交代はインテルにとって一段の圧力になる可能性がある。
インテルは7日の声明で「インテル、取締役会、リップブー・タン氏は米国の国家・経済安全保障上の利益を推進することに深く尽力しており、大統領の米国第一主義政策に沿って重要な投資を行っている」と強調した。タン氏はロイターのコメント要請に応じていない。
インテルは米国内の半導体製造強化の柱の一つで、昨年は「CHIPS・科学法」に基づき連邦政府の補助金や融資約200億ドルを確保した。
タン氏は2008年から21年までケイデンスのCEO、23年5月まで執行会長として経営のかじ取りを担っていた。この間に同社が中国の軍事大学に製品を販売したとして起訴され、今年7月に同社は罪を認めて1億4000万ドル余りの罰金支払いに同意している。
バーンスタインのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は「タン氏が『利益相反』を抱えているとは思わないが、現政権の性質を考えると、中国との関係はますます悪い印象を与えているようだ」と指摘。また「他のテクノロジー企業のCEOと異なり、タン氏はトランプ氏の怒りを和らげるのに役立つような個人的関係を築いていないようだ」と述べた。
米大統領が企業のCEOに公然と辞任を要求するのは異例で、 アナリストの間では、トランプ氏の介入を巡り見解が分かれている。
ラデンバーグ・サルマン・アセット・マネジメントのフィル・ブランカトCEOは「非常に残念な前例となるだろう。米大統領が企業の経営者について指図するのは望ましくない。しかし、トランプ氏の意見には確かに価値と重みがある」と述べた。同社はインテル株を保有していない。
インテルの株主であるアプタス・キャピタル・アドバイザーズの株式ポートフォリオマネージャー責任者、デビッド・ワグナー氏は「トランプ大統領が米国にビジネスを呼び戻そうと真剣に取り組んでいることを示す新たなシグナル」という見方を示した。