
Andrea Shalal
[ワシントン 22日 ロイター] - 米最高裁が相互関税などを違憲と判断したことで、トランプ大統領が他国に関税の脅しをかける能力はとりあえず弱まったことになるが、貿易相手国や企業にとっては不確実性が払拭されたわけではない。
トランプ氏は最高裁判決から数時間後には、1974年通商法122条に基づき150日の期間限定で世界各国からの輸入品に10%の関税を課す大統領令に署名。それから24時間も経たないうちに、新たな関税率を122条で可能な上限の15%に引き上げると述べた。通商法301条に基づき国別の調査を開始する方針も示している。
オバマ政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたマイケル・フロマン外交問題評議会会長は、最高裁判決の最も大きなインパクトは、貿易分野以外で大統領が好んで用いる圧力手段や制裁としての関税の脅威や行使を抑制することだと述べた。ただ、徴収した関税の還付方法や、今後導入する関税の内容など、依然不透明なままだと述べた。
昨年の相互関税発表後、米政権は約20件の貿易協定を取りまとめた。これらがどうなるかが貿易相手国・地域の憂慮するところだ。現段階で聞かれる反応は慎重なものになっている。アナリストからは、トランプ氏の怒りを買うことを懸念し、協定の破棄や再交渉を求めることは難しいとの見方が聞かれる。
元USTR高官で、現在はコロンビア大学国際公共政策学部に所属するミリアム・サピロ氏は、トランプ氏は「通商バズーカ」を失い、各国はトランプ政権との新規または進行中の交渉で幾分交渉力を得たのではないかと指摘したが、既存の協定の破棄は予想していないと述べた。
元USTR高官でアジア・ソサイエティ政策研究所上級副所長のウェンディ・カトラー氏は、トランプ氏の対応は、貿易相手国を常に警戒状態に置きたいという意向と能力を象徴すると指摘する。
「不確実性こそが実際の関税以上の強力な追加的テコになるというのが大統領の見立てだ。人々が彼の次の行動を懸念するからだ」と語った。
米シンクタンク、アトランティック・カウンシルで国際経済部門を統括するジョシュ・リプスキー氏は、代替関税や、多様な手段を駆使するというトランプ氏の意向を考えると、最高裁判決がトランプ氏の行動に与える影響を予測するのは時期尚早だと指摘した。
それでも、最高裁判決で、トランプ氏の行動が制約されたとカトラー氏ら通商分野の専門家は口を揃える。122条に基づく代替関税が有効なのは150日間。他の法令に基づく新たな関税は実施までに時間がかかる。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税徴収を最高裁が無効としたことで、それまでのような「いつでも、どこでも、どんな理由でも」関税を課すことはできなくなった。カトラー氏は「大統領は最も気に入っている手段を失った。特に外交問題や、貿易とは無関係に他国に対して抱く不満に関して、信憑性のある脅威を示す能力を失った」と語った。