
Gabriel Rubin
[ワシントン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 「解放の日」に打ち出された関税は1周年を迎えることもなかった。トランプ米政権が昨年4月に緊急権限の下で発動した一連の関税は、世界の貿易体制を揺るがし、数カ月にわたる延期や合意、報復的な威嚇、対立の激化を招いた。だが連邦最高裁は20日、大統領には関税の発動を巡り法的権限がなかったとの判断を示した。もっとも、この判断だけで場当たり的な駆け引きが終わるわけではない。最終的に止められるのは議会だけだ。
この関税を巡っては、既に大きな損害が生じている。ウォートン・スクールの推計によるとこれまで徴収済みの関税は約1750億ドルで、返還を迫られる可能性がある。コストコ COST.Oのような大手小売業者から家族経営の玩具メーカーまで、あらゆる規模の輸入業者が返還請求を行っている。ただ トランプ氏は代替関税を講じる方針で、鉄鋼・アルミニウム関連関税や国家安全保障関連の関税を課した権限は影響を受けない。判決後の記者会見で大統領は、通商法第122条に基づき新たに全世界を対象に10%の代替関税を課す方針を示し、その後直ちに大統領令に署名した。
結局のところ、トランプ氏と、そしてトランプ政権と交渉する各国政府にとって最も重要なのは、裁判所によって確認された通商における議会の優越的権限を議員が実際に行使するかどうかだろう。議会には最近動きの兆しもみられる。今月初め、関税を否認する採決を阻止しようとした共和党指導部の試みはに失敗した。ただ現時点では、議員が一斉に大統領と決別しようとする動きは見えない。関税を批判する決議は可決されたものの、与党からの支持は象徴的な水準にとどまり、ホワイトハウスの拒否権行使を覆すために必要な3分の2には遠く及ばなかった。通商政策を本当に取り戻すには、さらに多くの議員が行動を起こす必要がある。
状況がこれ以上明白になることはないだろう。最高裁のジョン・ロバーツ長官が執筆し、トランプ氏が任命した2人の判事も加わった6対3の多数意見は通商権限が明確に議会に属することを示した。議会予算局とニューヨーク連銀は最新の研究で、関税負担の90%超を消費者が負っていると指摘している。中間選挙を11月に控える中、ロイター/イプソスが今週公表した最新の世論調査では、経済運営に関するトランプ氏の支持率は34%にとどまった。今動かなければ、来年にはまったく異なる議会に主導権を委ねる結果となりかねない。
●背景となるニュース
*米連邦最高裁は20 日、大統領には特定の緊急事態法に基づき議会の承認を得ずに貿易相手国に関税を課す権限はないとの判決を下した。
*ペンシルベニア大学ウォートンスクールによると、これまで徴収済みの関税収入は1750億ドルにのぼる。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)