
Katrina Hamlin
[香港 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国は医薬分野でハイな状態にある。2025年には、3Sバイオ(三生製薬)1530.HK やCSPCファーマスーティカル・グループ(石薬集団有限公司)1093.HKなど国内のバイオテクノロジー大手は昨年、ファイザーPFE.Nなど海外の同業大手に医薬品や技術のライセンスを供与する数十件の契約を成立させた。「ビッグファーマ」と呼ばれる巨大製薬企業で勤務経験を持つ中国人起業家の本国帰還に加え、国内で臨床試験の裏付けとなるデータの信頼性が高まったことがこうした流れを後押ししている。これは、より高度な製品やサービス、輸出へと向かう大きな転換の一部だ。
調査会社ファームキューブによると、中国のバイオテクノロジー企業による海外企業への特許ライセンス供与契約の合計額は昨年1230億ドル超となり、前年の520億ドルから急増した。これは前払い金、臨床試験や商業面のマイルストーン達成時の支払い、ロイヤルティー、その他の利益を織り込んだ金額で、10億ドルを超える契約が複数あった。法律専門家や銀行関係者によると、こうした活発な動きはまだ終息からほど遠いという。
特許の利用者にはファイザー、アストラゼネカAZN.L、メルクMRK.N、ロシュなど大手が含まれる。ファイザーは3Sバイオからがん治療薬へのアクセスを得るべく総額60億ドル超の契約を約束した。中国の創薬プロセスは、補助金やコストの低さ、さらには潤沢な理系卒業生によってコストが下がっている。LSEGのデータによると、3Sバイオは20─24年の平均年間研究開発費の対売上高比が11%だったが、ファイザーは17%だ。
かつて海外の大手企業や投資家は中国企業のデータを信用するのをためらっていたが、今ではデータの規格ははるかにしっかりしているとみられている。ビッグファーマはウーシー・アップテック603259.SSなど中国企業に試験を外注さえしている。
中国側は資金を必要としているが、薬価には事実上上限が設けられている。ライセンシングの成功が株式公開を前に自社の評価額を確定させる助けとなる企業もある。ハンセン・バイオテクノロジー指数.HSBIOは昨年の上昇率が65%と主要指数の28%を大きく上回った。ディーロジックによると、香港および中国本土の取引所では昨年、バイオテクノロジー企業による株式での資金調達が50件余りあり、調達額は約90億ドルに上った。これは前年の7倍だ。
もっとも、地政学的な要因がこうした流れを妨げる恐れもある。米紙ニューヨーク・タイムズは昨年、米国は中国からの一部医薬品や治療法に制限を課すことを検討していると報じた。トランプ米大統領は昨年12月、特定の社名に言及せずに、「懸念される企業」について政府調達や助成金の供与を制限する「バイオセキュア法」に署名した。しかし中国が最良かつ最も安価な製品を作り続ける限り世界中に買い手は存在するだろう。
同じようなことが自動車から人工知能(AI)に至るまであらゆる分野で展開している。世界中の消費者、企業、投資家は、価格ばかりでなくイノベーションと技術を求めて、「メイド・イン・チャイナ」の医薬品やガジェットなどにますます大金を投じ始めている。
●背景となるニュース
*調査会社ファームキューブによると、中国のバイオテクノロジー企業による海外企業へのアウトライセンシング(特許ライセンスの外部供与)契約は2025年に総額1230億ドル超に上り、前年の520億ドルから大幅に増えた。アウトライセンシングは医薬品開発企業が、通常は前払い金やマイルストーン(段階的達成)報酬、ロイヤルティ(使用料)などと引き換えに、特定の市場において他社による医薬品や技術の開発・商業化を認める契約。
*香港と中国本土の証券取引所では25年にバイオテクノロジー分野の発行体が関与するエクイティ・キャピタル・マーケット(株式資本市場、ECM)取引が57件あった。調査会社ディーロジックによると、こうした取引による年間調達額は計87億ドルと、前年の約7倍に膨らんだ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)