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〔アングル〕ごみをAIで「都市鉱脈」に、高まるリサイクルの精度

ロイターDec 24, 2025 3:12 AM

Carey L. Biron

- リサイクルは理論的に素晴らしい考え方であっても実際は厄介な作業だ。プラスチックとガラスを分別し、濡れた紙製品と腐った野菜を仕分けし、有害物質を取り除くという作業は人の手に頼る仕事であり、ごみは急速に埋立地を満たしていく。

しかし、人工知能(AI)がここで有望な支援手段となっており、廃棄物処理業界に数十年ぶりの大変革をもたらす可能性がある。

「リサイクル率を上げようとずっと努力してきたが、何をやっても効果がないように思える。基本的に人は怠け者だ」と米南部バージニア州で8つの都市と郡のごみ収集を管理するデニス・バグリー氏は語った。

「これでそうした責任を(市民から)取り除ける。AIとロボット工学でそれが可能になりリサイクル量を増やせる」とバグリー氏は話した。

バグリー氏が率いる「サウスイースタン公共サービス局」は年間数万トンのごみを処理し、100万人以上のバージニア州住民のごみを焼却後、その灰を埋立地へ運んでいる。

しかし、地域の埋立地はわずか数十年で満杯になり、バグリー氏は「私の業界ではすぐそこまで迫っている」と説明した。

そこで見つけた解決策が、全国の地方自治体の関心を多く集めている。それは埋立地に送り込むごみの量を半減できるAI駆動の分別システムだ。

このAI分別システムの過去2年間の試験運用で、リサイクル率が数年間6.8%で停滞していたのがほぼ3倍の20%まで向上した。

この事業はバグリー氏の廃棄物処理企業と、施設を建設して運営するAMPの関連企業が11月に契約を結び、来年初めに稼働する予定だ。

バグリー氏は、バージニア州ポーツマスに建設されるこの施設は国内で最大規模となり業界の先駆けになるとして「これは大きな出来事だ。全国に広がるだろう」と語った。

米国の近代的なリサイクルは環境運動の高まる状況で1960年代に始まったが、近年は効率化が難しくなっている。

住民は新しいAIシステムでごみ、リサイクル品、さらには生ごみを一つの大きな容器に全て捨てることができ後で分別されるとAMPのティム・スチュアート最高経営責任者(CEO)は話した。

スチュアート氏によると、このシステムは例えばプラスチックをさらに15―20%、有機物をさらに40%多く回収でき、時間とともに学習を続ける。

このため、地方自治体のコストを削減するだけでなく、資源がより多く回収されるにつれて新たな収益ももたらす可能性がある。まだリサイクルサービスを提供していないような農村部でもリサイクルを安価に実施できる可能性があるだろう。

<廃棄物業界を「革命的に変える」>

地方自治体は長年、常に進化する包装方法や小売店と市民の気まぐれな習慣という、絶え間なく変化するリサイクルの要請に対処しようとして苦労してきたと北米固形廃棄物協会の公共政策・広報担当シニアディレクター、クリスティン・オルデンドルフ氏は語る。

同協会はAI導入に関する統計を持っていないものの、AI技術が固形廃棄物業界を「革命的に変えている」という。

オルデンドルフ氏は、AIの可能性は分別作業にとどまらないとして「マーケティングや人材ニーズ、全てについてさまざまな面で革命を起こしている」と訴える。

一例として中西部オハイオ州センタービルなどはごみ収集トラックにAI搭載カメラを試験的に設置している。カメラはごみをリアルタイムでスキャンしてリサイクルに適さない品目を「汚染物」として検知し、ごみ収集の決まりを守っていない家庭に通知している。

「汚染物が混入する比率が高いとリサイクルに余分なコストがかかる。分別施設で廃棄し処分費を払ってトラックで運ばなければならない」とセンタービル公共事業局長のパット・ターンブル氏は述べた。

センタービルは住民に対してリサイクル教育を試みたが、効果はあっても労力がかかった。

現在試験中のごみ収集トラックの車載カメラはそれよりも簡単で広範な結果をもたらす見込みだ、とターンブル氏は語った。

<電子廃棄物>

AIはまた、適切に扱わなければ人体に危険を及ぼす可能性がある電子廃棄物のようなより現代的なごみ問題の解決にも役立つかもしれないとジョンズ・ホプキンス大SNFアゴラ研究所の客員フェロー、デビッド・パーク氏は話す。

非営利団体「エンバイロメント・アメリカ」によると、米国人は1人当たり平均で年間47ポンドの電子廃棄物を出している。こうした電子廃棄物はリチウムイオン電池が含まれ、とりわけ電動スクーターに使われるものは例えば処理施設で圧縮されると爆発する可能性があるのだ。

AIは特定の形式の電池を探しだして廃棄物処理の作業員に危険を知らせ、安全で効率的な処分方法を提案できるとパーク氏は指摘する。

パーク氏は回収された素材の一部は高い価値を持つ可能性があるとし、ごみから価値を抽出できると踏んでいる。「米国ではわずか20―30%しか処理されず、残りは埋立地や焼却炉に送られている」とした上で、「私たちの未来を築くために必要な原材料はごみの中にあるのだ」と強調した。

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。
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