[ワシントン 9日 ロイター] - 米司法省が各州から収集した有権者登録データについて、犯罪や移民関連の捜査に使用するため国土安全保障捜査局(HSI)への提供を検討していることが、ロイターが入手した文書で分かった。関連情報には運転免許証番号など機密性の高いものも含まれ、プライバシーへの懸念といった問題が生じる可能性がある。複数の州は適切な法的根拠がないとして反発し、提出を拒否する動きも出ている。
司法省公民権局は、有権者名簿が2つの連邦法に準拠しているかどうかを調べたいとして州に書簡を送り、過去数カ月間にわたって有権者登録データを収集していた。少なくとも24州に対し有権者登録関連情報の提供を要請した。ブレナン司法センターの追跡記録や書簡などによると、このうち少なくとも22州に対しては登録有権者全員の完全なリストの提供を求めていた。連邦法は州に対し、有罪判決を受けたり死亡したりして有権者資格のない人を削除し、名簿を適切な状態に維持することを義務付けている。
国土安全保障省(DHS)の部局であるHSIは、提供を受けた有権者データを局内の法執行データベースの他の情報と照合する意向。米政権の少なくとも一部の法律専門家は、民事・刑事捜査に使用する目的であれば、公民権局の収集したデータ提供は合法だと考えている。
一方、ロイターの取材に応じた法律の専門家は、プライバシー法で政府が個人に関する記録を収集する前に公告が義務付けられており、データ共有はプライバシー上の懸念があると指摘。さらに、司法省が州側に伝えたデータ使用目的からも逸脱するとしている。公民権局の幹部経験があるロヨラ法科大学院のジャスティン・レビット教授は、こうしたデータの要請は「通常のものではなく、合法的でもない」との見方を示した。
DHSの報道官は司法省と情報共有に向けて協力していることを認め、不法滞在者が「米国の民主的プロセスを損なう」ことを防ぐことが目的だと述べた。トランプ米大統領は選挙に不正があったとの持論を述べる一方、移民の取り締まりを強化している。