Jonathan Guilford
[ニューヨーク 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米半導体大手エヌビディアNVDA.Oと人工知能(AI)は実質的に同義語だ。先進的な同社のチップは不可欠であり、より効率的にビットを処理できればできるほど、オープンAIやアンソロピックのようなモデルはより優れ、より安価になる。そのため、27日に発表された前年比56%増の売上高470億ドルを含む好調な決算は必然だった。結局のところ、ハイテク業界の巨人がAIに支出するなら、それはエヌビディアに支出するということだ。
新しいAIモデルを詳述する技術論文では、エヌビディアの製品がベンチマークとなっている。イーロン・マスク氏のような経営者が巨大なコンピューティングハブの構築について語る際、彼はそれを同社のチップ「H100」の倍数で測る。
これで莫大な収益につながらないわけはない。エヌビディアの売上総利益率は約73%で、AMDAMD.Oといったライバルを上回っている。
これは貿易戦争という大きな障害があるにもかかわらずだ。トランプ米政権は4月、「H20」と名付けられた中国向けチップの販売を一時禁止した。同社は以前、この四半期で80億ドルの売上が失われるとしていた。その通り、27日発表の決算における唯一の汚点は、AIブームの中核であるデータセンターの売上が予想を下回ったことだ。世界的な押し上げがあれば助かっただろう。
それにもかかわらず、H20の売り上げがないことを織り込みつつも、エヌビディアの次四半期の予想はアナリスト予想を上回った。これはおそらく安全な判断だろう。メディア報道によれば、中国当局は国内企業に対し、ファーウェイなど地元企業から調達するよう促している。地政学的な問題が収まったとしても、エヌビディアは今後3カ月間の中国向けチップの売上高を最大50億ドルと予想しており、これは以前示唆していた水準を大きく下回る。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、中国を年間50%成長する500億ドルのビジネスチャンスと見積もっている。しかしリスクは、世界2大経済大国である米中が離れると、エヌビディアとAIはもはやそれほど密接な関係ではなくなるということだ。ファーウェイなどの競合製品がまだ同等でないとしても、一定の研究努力が代替チップやソフトウエアの開発に費やされることになる。人間の知性は依然として重要であり、別の場所でブレークスルーを目指すだろう。それらの進歩を失う代償を計算するのははるかに難しい。
背景となるニュース
*エヌビディアは27日、7月27日までの四半期の売上高が前年同期比56%増の467億ドルになったと発表した。
*Visible Alphaのデータによると、データセンター部門の売上高は411億ドルに増加し、アナリスト予想をわずかに下回った。同社は、今四半期の売上高をアナリスト予想の538億ドルを上回る540億ドルと予想している。
*フアンCEOはアナリストとの電話会見で、もし自社が中国市場に完全に対応することが許されるなら、中国市場は今年500億ドルのビジネスチャンスとなり、毎年50%成長する可能性があると述べた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)