Humeyra Pamuk
[25日 ロイター] - トランプ米政権は、欧州連合(EU)の巨大IT規制「デジタルサービス法(DSA)」の実施に関係したEUないし加盟国の当局者に対する制裁発動を検討している。事情に詳しい2人の関係者が明らかにした。
貿易相手国が互いに定めた国内ルールを不公正だと不満を表明し合うケースは少なくないが、そうしたルール整備に関与した個人を制裁対象にするのは極めて異例。欧州が保守的な意見を抑圧していると主張するトランプ政権の行動がさらにエスカレートする恐れがあり、関税問題がもたらした米EU関係の緊張がさらに高まりかねない。
関係者の話では、米国務省はビザ(査証)発給制限などの具体的な制裁措置を行うかどうかまだ最終決定はしていない。対象となるEUや加盟国の個人もなお不明だが、先週この問題で米当局者が協議したという。
DSAは、ヘイトスピーチや児童ポルノといった違法コンテンツの排除を巨大IT企業に義務付ける法令。ただ米政府はかねてから、EUはヘイトスピーチ、誤情報、偽情報を取り締まる中で、表現の自由を過度に制限し、DSAでそうした制限が強化されていると反発している。
ルビオ国務長官は8月初め、EU加盟国駐在の外交官に対して現地政府やデジタルサービス当局と定期的に接触し、DSAと米企業がこれに関連して負担する費用について米国が懸念していると伝えるよう指示した。ルビオ氏は5月に、米国人がソーシャルメディアなどに表明した言説の「検閲」をする人物にはビザ発給を停止する可能性があり、その対象には米ハイテク企業を規制監督する外国政府当局者が含まれると示唆していた。
バンス副大統領は2月、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」などの言説を検索し、民主主義を後退させていると欧州の指導者を非難した。3月、EUの独占禁止当局やハイテク企業監督当局の責任者は米議員に対し、DSAはデジタル市場の開放性を維持するのが狙いで、米企業を標的にしているわけではないと説明している。