Robyn Mak
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 逆風にさらされている米半導体メーカー、インテルINTC.Oのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)にようやく朗報がもたらされた。3月にCEOに就任したタン氏は、野心的な会社再建に取り組んだが、トランプ米大統領からの辞任圧力、信用格付けの引き下げ、財務悪化など数々の試練に直面している。ソフトバンクグループ(SBG)からの20億ドル出資は、待ちに待った助け舟だ。
SBGによる出資の一環でインテルは新株を直近終値を若干下回る価格で発行する。SBGの出資率は2%弱になる。SBGの出資額は、ビジブル・アルファが予測するインテルの今年の設備投資額165億ドルに比べれば見劣りするが、少なくとも信頼維持には役立つはずだ。
タン氏はつい先月、次世代製造技術「14A」で大口顧客を確保できなければ、台湾積体電路製造(TSMC)2330.TWやサムスン電子005930.KSに後れを取っている受託製造事業からの撤退を余儀なくされる可能性があると警告した。それが助けを求める声だったとすれば、うまく届いたことになる。インテルはSBGに加えて、近く別の大株主を迎える可能性がある。ブルームバーグは18日、トランプ米政権がインテル株10%の取得することについて協議中と伝えた。政権は、出資にあたり米国内の半導体産業振興を目的とする「CHIPS・科学法(CHIPS法)」を活用する方向という。
タン氏に対する辞任要求を取り下げたように見えるトランプ氏と孫正義氏を味方につければ、タン氏は援軍を得たことになる。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた製造部門の切り離しを巡る取締役会との対立も、ホワイトハウスが取締役会に圧力をかけて歩み寄りさせることも可能だ。そして5000億ドル規模の「スターゲート」プロジェクトを含め孫氏の人工知能(AI)投資は、インテルにとって将来的な商機になる可能性をはらむ。
ただ問題は、インテルに今必要なのは、売り上げを復活させることだが、実現しそうにない。関係者によると、SBGは取締役会の席を求めず、インテル製品の購入も約束しないという。現実的に考えると、不振のインテルを立て直すことができるのは、同社の長期的な技術の進歩にコミットした戦略的投資家だけだ。それは、例えばエヌビディアNVDA.Oやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)AMD.Oが、TSMCに代わる先端半導体メーカーを支援する必要があると決定することだ。そうなるまでタン氏は、何とかやりくりするしかない。
●背景となるニュース
*ソフトバンクG、インテルに20億ドルを出資 米半導体への投資強化nL4N3UA1B3
*トランプ政権、インテル株10%取得巡り協議中と報道 株価下落nL6N3UA0QF
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)