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〔焦点〕プーチン氏を「勝者」にした米ロ首脳会談、成果には不確定要素も

ロイターAug 17, 2025 11:55 PM

Andrew Osborn

- ロシアのプーチン大統領は米アラスカ州に到着して数時間のうちに、トランプ米大統領にウクライナでの停戦ではなく和平を進めるのが適切だと納得させ、米国による新たな制裁を回避したばかりか、プーチン氏を孤立させるために西側が長年にわたって構築してきた枠組みを見事に粉砕して見せた。

今回の米ロ首脳会談について、ロシア国外ではプーチン氏が勝者との見方が大勢だ。面白いことにロシア国内では、西側で反対派が無能とけなすトランプ氏が賢明な政治家だと賞賛されている。

ロシアの国営メディアが重視したのは、プーチン氏が軍用機で米国領空の通過を許され、トランプ氏からレッドカーペットでの出迎えを受けた上に、米大統領専用車「ビッグ・ビースト」に同乗できた点だった。

ロシア外務省報道官は「西側メディアは気も狂わんばかりの混乱状態に陥っている。3年間にわたって彼らはロシアの(国際的な)孤立を話題にしていたが、本日目にしたのは米国でプーチン氏が歓待されている光景だった」と皮肉った。

もっともプーチン氏にとって首脳会談における最大の成果は、ウクライナ問題でトランプ氏にロシアが望む解決方法の少なくとも一部を受け入れさせたことだ。

会談前にトランプ氏は、ウクライナの早期停戦が望ましいと述べ、プーチン氏やロシア産原油最大の買い手である中国への制裁発動を示唆していた。

ところが会談後トランプ氏は、戦争はウクライナや欧州の同盟国が求め、米国も従来は支援してきたとりあえずの停戦を経ず、一足飛びに和平合意へ向けた交渉が行われるべきだとの考えを示した。

ロシア国営テレビで最も有力なトーク番組司会者の1人、オルガ・スカベイェワ氏は通信アプリのテレグラムに「トランプ氏の立場はプーチン氏との会談後変化した。今後は休戦ではなく、戦争の(根本的な)終結と新たな世界秩序(の構築)に重点が置かれる。ロシア政府の希望通りに」と投稿した。

<突破口>

首脳会談開催が決まった時点で、既にプーチン氏は成果を手にしてきた。手詰まりだったロシア外交に新たな道がもたらされたからだ。

メドベージェフ安全保障会議副議長(前大統領)は米ロ首脳会談で両国関係の再構築に向けた大きな突破口が開かれたと評価。「ハイレベル会合のためのメカニズムが復活した」と強調した。

ただプーチン氏は全ての要望をかなえたわけではなく、今回の成果をいつまで持続できるかも分からない。

例えばロシアは3年半にわたる戦争や西側からの制裁強化を受けて、経済に幾つかの黄信号が点灯しているだけに、プーチン氏としては米国が何らかの経済的な関係修復を持ちかけてくれれば自身の足場がさらに強固になっただろうが、トランプ氏はこの点に関して何も提示しなかった。

首脳会談前、ロシアのウシャコフ大統領補佐官は、貿易や経済の問題が話し合われるとの見通しを示していた。実際プーチン氏も財務相と政府系ファンドのトップをアラスカに連れてきたが、結局彼らはトランプ氏に会う機会は設けられなかった。

またトランプ氏は、恐らく2、3週間後には改めてロシア産原油購入に絡む中国への2次制裁を科すかどうか判断する考えだと記者団に語っており、プーチン氏が追加制裁を猶予される期間も不透明だ。

トランプ氏は2月にホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と口論に及んだことでも分かるように、ゼレンスキー氏が戦争終結に前向きでないとみなせば、すぐにゼレンスキー氏への怒りを爆発させるかもしれない。

18日には「ロシアは超大国だが、ウクライナはそうではない」と発言してウクライナは取引せざるを得ないとの見解をもらし、18日にワシントンを訪れるゼレンスキー氏に圧力をかけた。

だが今のところ、トランプ氏がゼレンスキー氏の頭越しにロシアと取引し、ウクライナをいわば「売り渡す」姿勢を明確にしているわけではない。

トランプ氏は、プーチン氏と協議した領土の交換など和平協定に向けた問題に同意するかどうかは、あくまでゼレンスキー氏次第だと表明した。

<経済に落とす影>

ロシアはウクライナ東部ドネツク州の75%前後を掌握しており、同じ東部のルハンスク州と合わせた「ドンバス地域」の割譲を求めている。

事情に詳しい関係者はロイターに、プーチン氏はウクライナがドンバス地域から兵を引くなら、ロシアがやはり自国領土と主張するウクライナの他の2州で戦闘を停止する用意があるとトランプ氏に伝えた、と明かした。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は欧州首脳に対して、ウクライナがドンバス地域をロシア領と認めれば、取引ができると語ったとされる。

ゼレンスキー氏は領土割譲を拒否している。

フランスのシンクタンク、モンターニュ研究所アナリストで、かつてモスクワ駐在外交官だったミシェル・ドゥクロ氏は「ロシアは米国との対話の窓口を再び築くことができた。しかし戦争を続け、経済の足場が崩れつつある中で、これらは限定的な成果に過ぎない」と分析する。

ロシア政府当局者は経済崩壊を否定しつつも、過熱の兆しがあり、政策調整がなければ来年景気後退に突入しかねないと認めている。

ロシア大統領府の考えに詳しいある人物は「プーチン氏にとって経済的な問題は自身の政策目標において副次的な存在だが、ロシアが抱える脆弱性とそれに関係するコストは理解している」と述べた。

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