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〔焦点〕トランプ氏とネタニヤフ氏、「同床異夢」の対イラン政策

ロイターJul 9, 2025 5:03 AM

Samia Nakhoul

- トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が7日に行った会談では、イラン攻撃の「輝かしい成功」が喧伝(けんでん)された。ただ両者が誇示した結束の裏には、イランやパレスチナ自治区ガザ、そして中東全域の最終的な政策目標を巡り、異なる思惑が隠されていた。

両首脳ともに先月のイラン核施設攻撃の成果を誇り、イランの核兵器保有計画を後退させたとアピールした。

だが情報機関の調査でイランはなお濃縮ウランを秘匿し、核施設再建能力を保持していることが分かっており、トランプ氏とネタニヤフ氏はいずれも今回の勝利が戦略的というより一時的な側面が強いことを承知している、と2人の外交官は話す。

これらの外交官によると、両者の見解が分かれているのはイランに対してさらに圧力を強める方法だ。トランプ氏は外交優先に傾いており、イランの核兵器開発を阻止するという限定的な目標を追求しようとしている。

対照的にネタニヤフ氏は力の行使をより重視し、必要なら体制転換に至る段階まで踏み込んで、イスラエルが脅威とみなすウラン濃縮計画自体をイランに放棄させる根本的な譲歩を迫りたい考えだ、とネタニヤフ氏の考えに詳しい関係者が説明した。

トランプ氏とネタニヤフ氏の意見は、ガザ情勢でも食い違っている。

国際的な和平をもたらす政治家というイメージを広めたいトランプ氏は、ガザにおけるイスラエルとイスラム組織ハマスの新たな停戦を働きかけているが、戦後の取り決めに関する全体の輪郭はなお定まらず、着地点は見えてこない。

ネタニヤフ氏は表向き停戦協議を支持しながらも、イランが戦略的に長年支援しているハマスの完全な解体に注力する決意を崩していない。ネタニヤフ氏は残るハマス指導者たちをガザから追放し、アルジェリアなどに移送したがっているが、ハマス側は全面拒否の姿勢だ。2人の中東関係者は、一時的な停戦と持続的な解決策の落差はまだ大きいとの見方を示した。

イランを巡り、ネタニヤフ氏は米国がイランと今週中にもノルウェーで核協議を再開する見通しとなっていることに不満を表明している。イランに経済的、政治的な命綱を与える可能性があるいかなる動きも認められない、というのがネタニヤフ氏の立場だ。

<異なる目的>

関係者は、ネタニヤフ氏がイランについて、最低でも「リビア方式」の核計画放棄を望んでいると明かした。つまりイランが核・ミサイル施設を完全に破壊し、たとえ民間用であっても国内でのウラン濃縮を放棄するということだ。

西側や中東地域の複数の当局者は、イスラエルがイランの外交だけでなく政治体制の転換も求めていると分析している。ただネタニヤフ氏は、イランが核兵器保有の意思撤回を拒否した場合、追加的な軍事作戦を実行するには、米政府の直接支援はともかく、少なくとも事前の了解が必要なことは認識しているという。

ところがトランプ氏には別の目的がある。先月の空爆後に同氏は、イランに圧力をかけて取引を成立させ、国交回復という大きな外交的成果を勝ち取る機会が到来したとみている、と先の外交官は解説する。

トランプ氏は7日、将来的にイランへの制裁を解除したい意向を示した。イランのペゼシュキアン大統領も同日、最高指導者ハメネイ師は米国の投資家が「活動を妨げる制限なしに」イランに来ることができると考えている、とXに投稿した。

もっともイラン指導部には、受け入れがたい2つの選択肢が突きつけられている。核兵器保有の意思を捨てず再び空爆されるか、その意思を放棄して国内で体面を失うかだ。そのためイラン側は交渉を引き延ばし、核開発の完全放棄には消極姿勢を見せ、取引成立と米国への経済的メリットを待ちきれないトランプ氏にとって困難な状況をもたらし得る、と西側や中東地域の当局者は予想する。

ネタニヤフ氏の考えに詳しい人物は、イスラエルにとっての代替的な選択肢は明確だと指摘。それは核開発能力の復活を予防する、定期的な攻撃を通じた「封じ込め政策」だと述べた。イスラエルとしては先月のイラン空爆で、自国が中東で傑出した軍事力を持つ上、比較的被害を受けることなく精密に行使できると改めて自信を深めた面がある。

一方トランプ氏は、イスラエルや米国内のタカ派がなお期待するようなイランの体制転換を可能にするほどの膨大な軍事的、政治的、経済的コストを負担することには消極的なように見える。

トランプ氏はイランへの再空爆を検討すると口にしつつも、先月22日の作戦を大胆かつ一時的で、限定的な攻撃との認識を示している。

<攻撃は十分か>

米首都ワシントンのシンクタンク、中東研究所のイラン専門家、アレックス・バタンカ氏は、トランプ氏がイランの核開発計画は「壊滅した」と繰り返していることについて、勝利宣言というよりも警告の意味があり、もう十分という合図だとの見方を示した。

また元米外交官でペルシャ語に堪能なイラン専門家のアラン・エア氏は、ネタニヤフ氏や同氏に同調する強硬派には、イラン体制転換に向けた実現可能な青写真やロードマップもないと述べた。イランの場合はイラクと異なり、革命防衛隊に守られた最高指導部を打倒することができる、信頼に足る反対勢力や地上軍事組織は存在しない。

イスラエルが軍事作戦に動けば、米国は最新兵器の供与などで支援する可能性はあるものの、イランに要求を受け入れさせる手段としては主に経済的な圧力や外交に期待している。その結果、はっきりとした出口が見えず、薄氷のような行き詰まり状態がもたらされている、と先の外交官は話した。

ネタニヤフ氏の考えに詳しい人物は、こうした中で同氏は、イランが足場を固め直す前の今こそがさらに攻撃する機会だと計算していると述べた。現在イランの防空態勢は破壊され、核施設は弱体化し、国外の親イラン勢力の勢いが衰えているが、時間の経過とともにイランにとって国内外の力を再結集する余地が大きくなるからだ。

複数の関係者は、ネタニヤフ氏にとってイラン攻撃は完了に程遠い作戦途中の段階にある、と強調した。

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