[ 7月8日 ロイター] - この問題に詳しい2人の情報筋によると、ブリュッセルは、米国から自動車を生産・輸出する欧州の自動車メーカーが、EUから関税を引き下げて自動車を輸入できるようにする取り決め((link))の可能性を追求することを検討している。
この協議は、ドナルド・トランプ米大統領との貿易協定を仲介するための欧州委員会の努力の一環であり、米政権が4月に実施した自動車および自動車部品の輸入に対する25%の高率関税((link))に取って代わるものである。
これは、米国に主要生産拠点を持つ自動車メーカーにとって明らかにプラスである。彼らは、米国での 生産を利用することで、関税へのエクスポージャーを下げることができるだろう。
これが、EUにとっての貿易協定の意味と、個々の欧州自動車メーカーが受ける影響である:
EUにとって何が問題か?
) 欧州自動車協会ACEAのデータによると、2024年に欧州から米国に輸出される自動車は、389億ユーロ((455億5,000万ドル)相当の75万8,000台近くにのぼり、これは反対方向の4倍以上にあたる。
あるEUの外交官は、 (link) 自動車はEUにとって「レッドライン」であり、自動車に関する譲歩はあらゆる協定の注意事項であると述べた。しかし、ブリュッセルとワシントンは相反する目標を掲げている。トランプ大統領は米国の自動車生産を復活させたいと考えている一方で、ブリュッセルはエネルギーコストの高騰や中国との競争に苦しんでいる同部門のために開かれた市場を望んでいるからだ。
誰が勝つのか?
ドイツのBMWBMWG.DEとメルセデス・ベンツMBGn.DEは、EUからの輸入に対して米国の輸出をカウントする仕組みから最も恩恵を受けるだろう。
例えばBMWは、2024年にサウスカロライナ州スパータンバーグ工場で生産された約22万5,000台を輸出したが、米国市場では約40万台を販売した。他の市場からの輸入台数は約17万5,000台で、輸出台数を下回っている。
メルセデス・ベンツは、アラバマ州タスカルーサ工場で生産する自動車の約3分の2、つまり2024年の生産台数ベースで約17万台を輸出している。
昨年は米国で約32万4,528台を販売し、他国から約23万5,000台を輸入した。
敗者となるのは誰か?
欧州最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンVOWG_p.DEは、そのほとんどがテネシー州チャタヌーガ工場で生産された車を輸出するのではなく、地元で販売しているため、利益を得ることはないだろう。
ある業界関係者によると、そのため、外国自動車メーカーが現地生産を拡大する計画を支援する投資クレジットに同意するよう、ワシントンに働きかける動きもあるという。
例えばフォルクスワーゲンは現在、 (link)、米国市場に全車種を輸入しているアウディ・ブランドの生産を現地化するかどうか、新工場を建設するか、既存の拠点を拡張するかを決定している。
ポルシェP911_p.DEも、現地生産を行わず、すべての車をヨーロッパから輸入しているため、メリットはないだろう。
ステランティスにはほとんど影響なし
世界第4位の自動車メーカーで、ジープ、ラム、クライスラーなどのブランドを所有するステランティスSTLAM.MIは、このような取り決めによって深刻な影響を受けることはないだろう。
ステランティスは多くの米国工場を運営しているが、そのほとんどは地元市場を対象としている。一方、米国と欧州連合(EU)間の自動車の輸出入の流れは歴史的に非常に少なく、通常、アルファロメオ、マセラティ、フィアットブランドの欧州製モデルに対して、米国製のトラックは少量である。
ボルボ・グループは、北米車の約40%をメキシコとカナダで生産しているため、メキシコとカナダに対する米国の関税に対してはるかに脆弱である。
ボルボ・カーズの明確な損失
ボルボ・カーズVOLCARb.STは、欧州で販売する車のほとんどが欧州からの輸入車であるため、米国の関税の影響を最も受ける欧州自動車メーカーのひとつである。昨年のグループ売上高に占める米国の割合は16%であった。
ボルボは、サウスカロライナ州チャールストン工場((link))での生産を拡大し、現在同工場で生産している電気自動車EX90に新モデルを追加すると発表した。
ボルボは、新型車は米国の消費者に人気のあるプラグイン・ハイブリッドのミッドサイズSUVになる可能性が高いと述べている。
ボルボ・カーズと同じく中国の吉利グループに属するポールスターPSNY.Oは昨年、中国製自動車に対する米国の高額な関税を回避するため、チャールストン工場でSUVのポールスター3の生産を開始した。
(1ドル=0.8540ユーロ)