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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕米豪の重要鉱物協定は価値ある挑戦

ロイターOct 22, 2025 2:47 AM

Antony Currie

- 中国の習近平国家主席は米国とオーストラリアが20日署名した「重要鉱物協定」の内容を読んでもまったく震え上がらないだろう。トランプ米大統領とアルバニージー豪首相は再生可能エネルギー、半導体、高性能兵器の製造に少量でも欠かせないレアアース(希土類)やその他の鉱石の採掘と精製能力を強化するために、合わせて約40億ドルの公的資金を投入する計画を打ち出した。こうした動きによってレアアース分野に対する中国の支配的な地位がすぐに崩れるわけでない。そして越えるべきハードルはいくつもある。しかし取り組む価値はある。

オーストラリアは試みるのに明らかに適している場所だ。米地質調査所(USGS)によると、オーストラリアは世界第4位のレアアース埋蔵量を誇り、リチウム、マグネシウム、アンチモンのようなその他の重要鉱物も豊富に存在する。大規模な鉱業が存在し、政府は大部分が採掘にとどまっている鉱業の状況を精製や加工のような付加価値の高い上流工程に拡大させようと強く望んでいる。さらに、オーストラリアの主要な顧客であり伝統的な同盟国の米国は、資金的負担を分かち合うパートナーとして理にかなっている。

そういうわけで、米政府と豪政府はそれぞれ10億ドルをさまざまな開発事業に投資しようとしている。加えて、米輸出入銀行はオーストラリアの鉱業企業7社に対し、22億ドル相当の支援意向書を発行している。しかし、トランプ氏が20日、1年後には「重要鉱物とレアアースがどうしたらいいか分からないほどたくさん手に入るだろう」と断言したにもかかわらず、鉱石の供給が急激に増加することはないだろう。

例えば、豪政府が発表した最初の2件の出資先はいずれも初期段階にある既存の開発事業だ。アルコアのガリウム精製所計画は2億ドルが投じられ、世界供給量の約1割を担う可能性があるだろう。豪富豪ジーナ・ラインハート氏が筆頭株主のアラフラ・レアアースARU.AXは昨年受けた5億ドル超の融資と補助金に加えて、さらに1億ドルを得る。どちらも稼働するまでに少なくとも数年かかるだろう。

その他の開発事業はまだほぼ構想段階にあり、はるかに長い時間を要する。環境規制上の許可の取得が難関となるだろう。オーストラリアは環境規制を現在見直しているところだ。さらに、重要鉱物の鉱石を採掘した後の工程に携わる専門人材は中国に比較的多く集まっている。また、政府の支援があったとしても、企業が掘削機や工場を稼働させられるという保証はない。たとえ事業が成功したとしても、将来の政権は現在の政治指導者たちが設定を約束した価格帯で生産補助金を出そうとしないかもしれない。

それでも20日の協定は先進国がこの分野で挑む覚悟を持っているという強いメッセージを発している。少なくとも、競争意識を刺激するには十分だろう。

●背景となるニュース
*米豪首脳は20日、レアアース(希土類)および重要鉱物に関する協定の合意文書に署名した。nL6N3W10PB
*米国とオーストラリアは協定に基づき豪企業7社に総額22億ドル超の資金を提供する方針。nL6N3W2069

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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