米連邦準備制度の利下げと政府閉鎖という「グレー・ライノ」が衝突、金価格は3,800ドル突破で最高値更新

TradingKey – 6週連続の上昇を経て、金価格はさらに上伸し、史上初めて心理的節目である3,800ドルを突破した。今回の上昇は、FRBの利下げとドル安に加え、米政府閉鎖問題も背景となっている。

9月29日（月）、国際金価格は一時1％超上昇し、1オンス＝3,800ドルを突破。直近では3,805.87ドルを付けた。金は6週連続で上昇し、過去1カ月で11％超の上昇幅を記録した。同時に、銀価格も日中で2％超上昇し、1オンス＝47ドルを突破した。

【2025年金価格チャート、出典：TradingKey】

FRBの利下げ観測の強まりが、金価格の連続史上高値更新を後押ししている。金は6月から7月にかけて狭いレンジで推移したが、8月末に再び強い上昇局面を迎え、年初来で45％高となっている。利下げによるドル安は、海外投資家にとってドル建ての金購入コストを相対的に低下させ、需要を押し上げた。

バークレイズ銀行は「ドルや米国債に比べ、金の価格は決して割高ではない」と指摘。FRBの独立性喪失リスクを考慮すれば、米国債には一定のリスクプレミアムが織り込まれるべきであり、その意味で金は有効な安全資産となる、と評価している。

新会計年度の開始を目前に、米国では再び政府閉鎖の危機が迫っている。今回も暫定予算案が議会で成立しなかったことが原因だ。トランプ大統領は上下両院の党派指導部と緊急会談を行い、10月1日までに合意形成し政府閉鎖を回避することを目指している。

もっとも、米政府閉鎖は慣例化した「グレー・ライノ」現象とはいえ、恒久的な人員削減や各利益団体との政治的関係の悪化により、今回の閉鎖は例年より大きな影響を及ぼす可能性がある。

政府閉鎖は、FRBが注視する9月の雇用統計（非農業部門雇用者数）や9月CPIの公表を脅かすリスク要因ともなっている。市場では、雇用が弱含むとの見通しが利下げを後押しし、金の上昇を支えるとの見方が広がる。

統計公表の遅延リスクは残るものの、他の経済指標とあわせれば、FRBが年内に2度の追加利下げを実施するとの予想が優勢だ。むしろ、この不確実性自体が金価格を押し上げる一因となっている。

一方でアナリストは、市場センチメントが極めて楽観的であり、今週にも再び史上高値を試す可能性があるとしつつ、すでに多くの投機的ポジションが積み上がっている点を挙げ、さらなる上値追いには慎重姿勢が必要だと警告している。

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