TradingKey - 2025年8月22日、日本は7月のインフレ統計を発表した。データによれば、全国消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は6月の3.3%から3.1%へと鈍化した。同時に、生鮮食品を除くコアCPIは市場予想の3%をわずかに上回ったものの、前回値から0.2ポイント低下した。一方で、食品とエネルギーを除く「コアコアCPI」は3.4%となり、低下傾向は示さなかった。7月の総合CPIとコアCPIが下落した背景には、エネルギー価格の低下、東京都区部の7月CPIの明確な減速、そして総合CPIの低下トレンドに伴う慣性、という3点がある。
先行きを見ると、日本のインフレはピークから段階的に低下しているものの、短期的にはCPIが日本銀行の2%目標を大きく上回ると見込まれる。したがって、日銀は10月に利上げプロセスを再開すると推測される。対照的に、米連邦準備制度(FRB)は9月に利下げを再開する公算が大きい。両国の政策金利差が縮小し、日本経済が引き続き底堅さを示すなか、ドルに対する円の上昇が見込まれる。
出典:TradingKey
2025年8月22日、日本は7月のインフレ統計を公表した。データによれば、全国消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は6月の3.3%から3.1%へと鈍化した。同時に、生鮮食品を除くコアCPIは市場予想の3%をやや上回ったものの、前回から0.2ポイント低下した。ただし、食品とエネルギーを除外した「コアコアCPI」は3.4%となり、低下は確認されなかった(図1)。
図1:市場コンセンサスと実績の比較
出典:Refinitiv、TradingKey
7月の日本の総合CPIおよびコアCPIの低下は、以下の3つの要因に基づく。 ・第一に、今回のインフレ指標が鈍化した主因はエネルギー価格の低下である(図2)。7月のエネルギー価格は前年比0.3%低下し、これは2024年3月以来初めてのマイナスとなった。 ・第二に、東京都区部の7月CPIが明確に低下した。6月と比べ、総合CPIとコアCPIはいずれも0.2ポイント下落した。東京の物価動向は先行指標としての性格を持つため、その伸び率鈍化は全国インフレに顕著な影響を与える(図3)。 ・最後に、全国の総合CPIは年初から持続的な低下局面にあり、1月の4%という高水準から6月の3.3%へと段階的に落ち着いてきた。他の経済指標と同様、CPIにも慣性が存在し、こうした下方トレンドの影響で7月のCPIは前月よりも低下した。
もっとも注目すべきは、政府が緊急米備蓄を放出したにもかかわらず、高温による作柄悪化の影響で、7月のコメ価格が前年同月比で90.7%上昇した点である。コメ高騰の波及効果は大きく、加工食品価格は前年比8.3%上昇し、これは2023年9月以来の最速の伸びとなった。
図2:日本・全国消費者物価指数(前年比、%)
出典:Refinitiv、TradingKey
図3:東京都区部消費者物価指数(前年比、%)
出典:Refinitiv、TradingKey
成長面では、米国による関税大幅引き上げが日本の輸出を圧迫しているものの、日本経済は一定のレジリエンスを示している。直近公表の第2四半期GDPは予想外に強く、加えて月初に成立した日米貿易合意も追い風となり、「関税に起因する景気後退」を回避できるとの見方が投資家の間で広がっている。
先行きについては、日本のインフレはピークアウト後の低下局面にあるものの、短期的には日銀の2%目標を大幅に上回ると予想される。金融政策の面では、2025年7月30日に日本銀行は政策金利を0.5%に据え置き、タカ派色はやや後退した(図4)。しかし、現在のインフレ水準がなお高いことを踏まえると、この状況が長く続くとは考えにくい。日銀は再びタカ派姿勢へと舵を切り、10月に利上げを再開するとの見立てである。対照的に、FRBは9月に利下げを再開する可能性が高い。日米の政策金利差が縮小し、日本経済の底堅さが続くなかで、ドル円は円高方向に振れやすいと判断する。
図4:日本銀行の政策金利(%)
出典:Refinitiv、TradingKey