Lewis Krauskopf
[ニューヨーク 31日 ロイター] - テック株は、米・イスラエルとイランとの戦争に起因する混乱において「安全資産」としての役割を果たすのが難しくなりつつある。これは米国株全般にとって大問題になりかねない事態だ。
過去3年余り続いてきた強気相場で株価指数上昇の大半を占めてきたのは、テック株や関連する超大型株だった。投資家が引きつけられるのは、力強い収益と堅固なバランスシート、競争上の優位性が備わっていると周知されているからだ。
しかし、今回の中東危機が始まる数週間前から下落していたテック株の多くは、米・イスラエルのイランへの攻撃開始から1カ月でさらに下げ幅が拡大している。
エドワード・ジョーンズのシニア・グローバル投資ストラテジスト、アンジェロ・クーカファス氏は「何もかもが今の環境で痛手を受けている。テック株もその例外ではない」と述べた。
テック株の軟調な地合いは、米国が第1・四半期に直面した波乱の大きさを象徴する。S&P総合500種.SPXもこの間、約4年ぶりの低調な値動きになったもようだ。
イラン攻撃開始以降、S&P総合500種とS&P情報技術株.SPLRCTはいずれも8%近く下落。メタ・プラットフォームズMETA.Oやグーグル親会社アルファベットGOOGL.Oなど一部超大型株の下げはそれ以上になった。テック銘柄が多いナスダック総合.IXICは先週、昨年10月に記録した過去最高値からの下落率が10%を超え、正式に調整局面入りした。
<現金化や利回り上昇>
複数のアナリストは、幾つもの要因が重なってテック株の下落をもたらしたと分析している。例えば投資家が株式投資のリスクを局限する上で、流動性の高いテック株を含めた強気市場における最大の勝ち組の一部を現金化しているかもしれない。
グリーンウッド・キャピタルのウォルター・トッド最高投資責任者は「テック株は3年にわたって大きく上昇してきた。市場参加者は多分、最大の収益を得たこれらの銘柄について若干リスクオフに動いているのだろう」と推測する。
米国債利回り上昇も株価のバリュエーションを圧迫する傾向があり、特に将来の利益見通しに基づいて評価される部分が大きいテック株が最も打撃を受けやすい。足元では戦争に伴うインフレ懸念で、米国債利回りが上がっている。
またテック株にとっては一連の業界固有の逆風が吹く。具体的には、人工知能(AI)に一部企業の事業が代替される可能性や、テック大手による巨額のデータセンター向け投資などが挙げられる。先週には利用者が幼少期にSNS依存に陥った責任を問われたメタとグーグルに対する訴訟で、米地裁陪審が賠償を命じる評決を下したことも新たなリスクだ。
レイモンド・ジェームズ・インベストメント・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト、マット・オートン氏は、さまざまな要因が積み重なり、テック株は資金を振り向けるのがより難しい投資先になっているとの見方を示した。
オートン氏は、テック株が過去数年にわたって成功し、市場を支配する立場になったこと自体が、投資家に最も手っ取り早い現金化手段にされた要因でもあるとみている。
テック株はこれまでの急激な値上がりで、S&P総合500種やナスダック総合などの主要指数におけるウエートは相当な大きさになった。最近の下落を考慮しても、S&P総合500種に占めるウエートは約33%に上る。
そうした「集中リスク」ゆえに、テック株は市場全体の方向を引き続き左右している。
オートン氏は「テック株が落ち着きどころを探り出せるまで、株価全般の底を見つけるのはほぼ不可能だ」と述べた。
<割高感は薄れる>
一方でテック株、超大型株の利益見通しは総じて明るい。LSEGのIBESによると、今年のS&P総合500種企業全体の予想増益率は18.8%であるのに対して、テック株は43%だ。
ベーカーアベニュー・ウエルス・マネジメントのチーフストラテジスト、キング・リップ氏は、中東戦争に起因するエネルギー高が米経済成長を損なうとすれば、テック株の収益力の堅調さは特に魅力を持つと指摘。「低成長市場において投資家は利益の伸びを渇望している」と付け加えた。
足元の下げでテック株の割高感が薄れたとも言える。LSEGデータストリームによると、3月27日時点でテック株の12カ月予想利益に基づく株価収益率(PER)は20倍と、昨年10月終盤の32倍から低下している。2017年以降で初めて、S&P総合500種企業全体の19.3倍を下回りそうな展開だ。
実際、エヌビディアNVDA.OのPERは19倍強と19年以来の低水準で、メタは17倍と過去3年で最も低い。
フランクリン・テンプルトンのシニア市場ストラテジスト、クリス・ガリポー氏は「リスク・リワードは改善している。株価下落とともに、テック株保有リスクも下がりつつある」と述べた。