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COLUMN-〔BREAKINGVIEWS〕オープンAI投資で膨らむソフトバンクの財務リスク

ロイターMar 31, 2026 5:50 AM

Karen Kwok Liam Proud

- 対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を手がける米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)とソフトバンクグループ9984.Tの孫正義会長兼社長はタッグを組むようになってきている。アルトマン氏は人工知能(AI)ブームの顔として公の場に立つ一方、孫氏は資金面での後押し役としての立場を強めている。ソフトバンクグループは今年末までに650億ドルを出資し、米マイクロソフトMSFT.Oやアマゾン・ドット・コムAMZN.O、エヌビディアNVDA.Oといった他の主要企業の出資額をはるかに上回る規模となる。
しかし、時価総額が1400億ドル規模のソフトバンクグループの負債は増加しており、さらなる資金を捻出するための選択肢はいずれもデメリットを伴う。オープンAIやAI業界は、ソフトバンクグループからの資金提供がなくなった場合を想定すべき時が来ている。
ソフトバンクグループは2024年9月にオープンAIへ初めて出資し、現在は最大の出資者となっている。ソフトバンクグループは、オープンAIを顧客として頼っていない数少ない支援企業の一つだ。支援企業の多くは顧客であるオープンAIへの資金提供によって追加収益を得られる立場にあるため、投資額に対する感度が比較的低いと言える。
結果としてソフトバンクグループは、現在の評価額が8400億ドルとなっているオープンAIの企業価値を決定づける中心的な存在となった。さらにソフトバンクグループはアルトマン氏が推進し、米国のAIインフラに最大5000億ドルを投じる「スターゲート」計画とも深く結びついている。
この密接な関係は、孫氏が中国の電子商取引(EC)大手アリババグループや、米共用オフィス大手ウィーワークを支援した事例をほうふつとさせる。ただし、つながりの度合いはさらに際立っている。
一つの問題は、投資がソフトバンクグループのバランスシートを圧迫していることだ。孫氏にとっても、信用格付け会社にとっても重要になる財務健​全性の指標が負債カバー率(LTV)だ。同社の純負債額は500億ドル程度で、資産には英半導体設計大手アームARM.O、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が支援するスタートアップ企業、携帯電話会社ソフトバンクなどが含まれる。上場しているソフトバンクグループの27日の株価に基づくと、これらを合わせた帳簿上の価値は2800億ドル程度となる。LTVは18%と、一見すると余裕のある水準を示している。

「平常時」に孫氏が設定した25%のLTV制限枠との差額に基づくと、ソフトバンクグループには200億ドルの追加借り入れ余地がある。しかし、これはオープンAIに数カ月のうちに追加出資すると約束している300億ドルの資金調達には不十分であり、スイスのABBのロボティクス事業買収などに充てる85億ドルにも足りないことは言うまでもない。
ソフトバンクグループは27日、資金不足を埋めるために最大400億ドルの​つな​ぎ融資をみず⁠ほ銀行や​三井住友​銀行などと契約したと発表​した。だが、これはあくまで一時的な措置に過ぎない。債務を返済し、LTVを制限枠内に戻すためには他の方法で資金を調達しなければならない。
活用できる手段はいくつかある。その一つは米携帯電話会社TモバイルUSの60億ドル相当の株式を売却することだ。SVFも2025年末の株価ベースで250億ドル相当の上場株式を保有している。
だが、こうした株式を売却しても、債務問題を別の問題と取り替えるに過ぎない。このような方法で資金を調達し、オープンAIへの投資が増加するのに伴い、ポートフォリオでの流動資産の割合は25年3月に75%だったのが25年12月には51%へ低下している。
S&Pグローバル・レーティングは今月3日、​ソフトバンクグル‌ープの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」​に引き下げたと発​表。オープンAIに対す⁠る巨額出資により、​投資資産の流動性や質、​財務余力が大きく悪化した状態が続く可能性が高い​ことを懸念材料として挙げた。

Breakingviewsの推計によると、ソフトバンクグループがアーム株を担保に入れて借りている額は、現在の時価総額の15%にとどまり、相対的には低い水準にあるように見える。しかし、浮動株比率が13%にとどまるアームの株価は変動が激しく、今後の借り入れを制限する可能性がある。
もう一つの選択肢は、SVFを担保にして借り入れを進めることだ。
ソフトバンクグループの後藤芳光最高財務責任者(CFO)は2月、同社がオープンAI株を担保とした資産担保型マージンローンの導入を検討していることを明らかにした。とはいえ、オープンAI株を担保にして借り入れ、その資金でさらにオープンAI株を購入するということは奇妙かつ危険な悪循環のように思える。
ソフトバンクグループはこうした手段を組み合わせ、最大400億ドルのつなぎ融資を返済できる可能性はかろうじてあるようだ。しかしながら、結果としてソフトバンクグループの信用力は大幅に低下し、S&Pによる格付けがジャンク(投機的格付け)級へと引き下げられるリスクが生じる。ひいては、借り入れコストの上昇を招くことになる。
その意味では、ソフトバンクグループが来年も追加資金を投入できるとは考えにくい。ソフトバンクグループの信用リスクを示す円建て5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは昨年10月の200ベーシスポイント(bp)から、現在は約370bpまで上昇している。

孫氏はこれまでも厳しい状況も乗り越えてきた。2000年2月から8月にかけてITバブルが崩壊した際、当時のソフトバンク(現ソフトバンクグループ)の時価総額のうち約1600億ドルが消失した。同社は生き残り、アームや米ウーバー・テクノロジーズUBER.Nなどへの投資で利益を上げ続けてきた。
今回もSVFが出資する企業、とりわけオープンAIなどが相次いで新規株式公開(IPO)に踏み切れば、大きな助けとなるだろう。また、もしも新規の投資家が非上場企業の評価額を正当化すれば、これは極めて大きな「もしも」であるが、ソフトバンクグループのポートフォリオは即座に信用力が高まり、新規上場株を担保に入れて借入金を上積みできる可能性がある。
とはいえ、オープンAIのIPOに依存すること自体が、大きな転換点を迎えていることを意味する。それは評価額を原動力としてきた孫氏の役割が弱まりつつあることを示唆している。
リスクとして立ちはだかるのは、より冷静な上場企業への投資家がオープンAIの技術の価値を低く評価し、資金調達活動が鈍化し、ひいてはオープンAIの成長が阻害される可能性があるという点だ。そのようなシナリオになった場合、影響はソフトバンクグループとオープンAIにとどまらず、はるかに広範囲へ及ぶことになるだろう。


(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

免責事項:本サイトで提供する情報は教育・情報提供を目的としたものであり、金融・投資アドバイスとして解釈されるべきではありません。

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