
Jamie McGeever
[オーランド(米フロリダ州) 23日 ロイター] - 米株式市場はけん引役がついに超大型ハイテク株「マグニフィセント・セブン(M7)」以外の銘柄にも広がるのだろうか。第3・四半期決算シーズンの発表、特に2026年の業績見通しに関する初期の兆候からすると、その可能性は十分にあると言えそうだ。
これまでアップル、アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラのM7は、利益、時価総額、株価上昇の勢いの点で長らくS&P総合500種指数を牛耳ってきた。
だが、その支配力は少しずつ緩み始めている可能性がある。
LSEGデータ&アナリティクスの上級リサーチアナリスト、タジンダー・ディロン氏によると、M7の第3・四半期の利益の伸び率は16.6%となり、S&P総合500種構成企業全体の9.2%を依然として大きく上回ると予想されている。しかし伸び率の差は7.4ポイントと、22年第4・四半期以来、約3年ぶりの幅に縮小する見込みだ。
同様にクリアブリッジ・インベストメンツの戦略責任者ジェフ・シュルツェ氏は、今年の暦年ベースで見た場合にM7と、M7以外のS&P総合500種構成企業の利益伸び率の差は昨年の34ポイントから今年は14ポイントに縮まり、さらに来年は5ポイント未満に縮小すると見込んでいる。
またシュルツェ氏は、中小型株で構成されるS&P1000種企業の利益の伸び率が来年はM7を超えると予想。近年の流れから見れば驚くべき転換だと指摘する。「M7の成長優位性が薄れれば、市場のけん引役は割安のまま放置されている出遅れ銘柄に移るのではないか」と述べ、第3・四半期決算はこの点で「励みになる内容」だったと付け加えた。
また、金融・財政政策による景気刺激策が来年はより幅広い企業にとって追い風となり、工業や一般消費財など景気循環型セクターが特に有利になるとも分析している。
<注目は出遅れ銘柄>
ブラックロックのアナリストも、巨大ハイテク株に後れを取っている出遅れ銘柄が今後その差を縮め始めると予測し、より幅広い企業で利益の伸びを支えることになりそうな要因として2点を挙げている。
1つ目は米経済の底堅さ。エコノミストの多くは来年の米国内総生産(GDP)成長率が2%か、それ以上に加速すると見ている。ブラックロックは今年の米GDP成長率は1.5%にとどまると予想するが、数四半期前には多くの専門家が景気後退を予想していた。
2つ目はAI関連支出。確かに、これはM7が支配的地位を維持する一因となっているAI楽観論を背景としているが、巨額のAI関連設備投資はデータセンターを建設する建設企業、電力を供給するエネルギー企業、そして設備や素材を提供する工業・素材メーカーにも恩恵をもたらす。
LSEGのディロン氏によると、素材セクターと工業セクターは26年の利益伸び率がそれぞれ20%、18%となり、ハイテク企業の22%に次いで第2位と第3位に付け、3セクターはいずれもS&P総合500種全体の14%を大きく上回ると予想されている。
<ネットフリックスとテスラに警戒サイン>
市場のリバランス(資産配分の再調整)はすでに始まりつつあるのかもしれない。ダウ工業株30種平均は過去1カ月でナスダック総合指数やS&P総合500種をアウトパフォームしている。もっとも、これは非常に短い期間で、ダウの優位性はわずか1ポイント程度に過ぎないのだが。
それでも変化はどこかから始まるものであり、資金再配分の余地は十分にある。過去6カ月でナスダックの上昇率はダウの20%の2倍に達している。もし米経済成長が堅調を保ち、企業業績がアナリスト予想どおりに好調なら、こうした値動きの格差が縮小する可能性は十分にある。
一方、こうした楽観シナリオを疑う理由も事欠かない。具体的には労働市場の軋み、関税の影響の拡大、そして米中貿易戦争の行方などが挙げられる。さらにパッシブ投資、モメンタム取引、さらには広く浸透する「押し目買い」の投資マインドが、実体経済の状況に関係なくM7の優位を維持させる可能性もある。
とはいえ、市場が少数の大型株や特定のセクターに極端に依存する「トップヘビー」な状態はこれまでかなり長く続いてきた。もしテスラやネットフリックスのように他のビッグテック企業の決算も期待外れに終わるようなら、長らく待ち望まれていた市場の「裾野拡大」がついに訪れるかもしれない。
(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)