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COLUMN-米政府機関閉鎖で経済統計発表に遅れ、FRBはますます視界不良

ロイターOct 3, 2025 3:03 AM

Jamie McGeever

- 米連邦準備理事会(FRB)が先月利下げを再開した際、パウエル議長は、以降の政策決定では経済データが通常にも増して重要になると示唆した。しかし米政府機関の一部閉鎖により、FRBは目隠し状態で道を進むことになるかもしれない。

パウエル氏は9月17日、連邦公開市場委員会(FOMC)が25ベーシスポイント(bp)の利下げを決めた後の記者会見で「毎会合ごとに見極めていくことになる。データを点検していく」と述べ、「現在、リスクの無い道は存在しない」と付け加えた。

それらの道は今、ずっとリスクが高くなった。

10月1日に始まった政府機関の閉鎖により、大量の経済データの発表に遅れが生じる可能性がある。つまりFRBが労働市場と物価動向を正確に評価する能力――ただでさえその能力は限定されていたが――が、大きく低下するということだ。翻って市場も、短期的な金利見通しに確信を持ちにくくなる。

労働省が発表する週間失業保険新規申請に加え、同省労働統計局(BLS)が発表する重要な月次雇用統計と消費者物価指数(CPI)の発表が遅れる見通しだ。

本来、9月雇用統計の発表予定日は3日、CPIは15日だ。両統計はおそらく、28―29日のFOMCにおける政策決定に最も大きな影響を及ぼすデータだろう。

ラボバンクのアナリストチームは、両統計はFOMC内のタカ派とハト派のバランスを動かす可能性があるため、発表が遅れるのはFRBにとって「非常に都合が悪い」と指摘しているが、これでも非常に控えめな表現だ。

9月FOMCの金利・経済見通し(ドットチャート)は、予想中央値で年内にあと2回の利下げを想定しているが、この予想はちょっとしたことで変化するだろう。予想分布を見ると、FOMCのメンバー19人中、9人は年内の追加利下げが1回、もしくは皆無と予想しており、見解は明らかに二極化している。政府機関閉鎖によって、ハト派が勢いを増すだろうか。

<データの質に疑念>

金利先物市場は既に、10月会合で25bpの利下げが実施されることを完全に織り込んでいる。

9月のような「保険的利下げ」(パウエル議長)を再び実施することは妥当だろう。ビハインド・ザ・カーブに陥って後々さらに積極的な利下げを余儀なくされるリスクは、避けた方が良い。

政府機関の閉鎖が長引く場合にはなおさらだ。その場合には10月か12月の会合で50bpの利下げが俎上に上るかもしれない。

オックスフォード・エコノミクスの首席米国エコノミスト、ライアン・スウィート氏は、一部の閉鎖だけでも国内総生産(GDP)を1週間当たり0.1―0.2%ポイント押し下げると推計している。第1次トランプ政権時に記録した35日間という過去最長の閉鎖になれば、第4・四半期の実質GDP成長率は0.5―1.0%ポイント押し下げられる計算だ。

ただ、追加利下げが一切実施されない可能性も十分にある。パウエル氏が主張に沿ってデータに基づいて判断するのではなく、視界不良の中で利下げを行って火に油を注ぐなど、もってのほかだ。

タカ派の基本シナリオは説得力を増しているように見える。GDP伸び率は年率4%近く、インフレ率は物価目標を約1%ポイント上回って沈静化の兆しは乏しく、株価は過去最高値を更新している。政府機関が数日間、いや数週間閉鎖されたとしても、タカ派のシナリオが崩れるかどうかは分からない。

大半のFOMCメンバーと民間エコノミストの見解が一致することがひとつある。米経済データの質と信頼性が悪化しているという点だ。これは調査票への回答率の低下が少なからず影響している。この結果、データがゆがみ、あるいは不正確になり、修正の頻度と程度が大きくなっている。

ゴールドマン・サックスのエコノミストチームの推計では、政府統計の標準誤差は現在、2015―19年当時に比べて平均26%上昇し、10統計中8つで上昇している。回答率の低下によって最も大きな影響を受けているのが雇用統計だという。

リッチモンド地区連銀の調査部長、アンナ・コブナー氏は1日公表した論文で「これは古い問題であり、古い解決策、すなわち、より多くのデータを収集することが今なお有効だ」と結論づけた。

この問題の解決には、政府機関閉鎖が終わった後もずっと長く待つ必要があるだろう。統計が一切発表されないよりは、不完全な統計でも発表された方がましだろうか。われわれは、間もなくその答えを知るのかもしれない。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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