TradingKey - 人工知能(AI)ブームの旗手であるエヌビディア(Nvidia, NVDA)は、2025年自然年4-6月期(2026会計年度第2四半期)の決算発表を控えている。市場では「全体市場で最も重要な決算」と位置づけられ、同社の業績がAI需要や取引の熱気が実態を伴っているかを示す試金石となる。
TradingKeyが集計したコンセンサスによれば、同社の第2四半期売上高は前年同期比53%増の460億ドル、1株当たり利益(EPS)は51%増の1.01ドルと予想されている。売上高・EPSともに50%超の伸びが見込まれており、AI需要が依然として高成長軌道にあることを示唆する。
もっとも、成長率は前年ほどの驚異的水準には届かない。前年同期は売上高が122%増、EPSが151%増と三桁成長を記録していた。増速が二桁に鈍化した背景には、成熟化の自然な過程に加え、米国政府による中国向け輸出規制や「Blackwell」世代GPUの供給制約などがある。
Evercore ISIのアナリストは、エヌビディアの成長率は50%前後で底打ちする可能性があり、これがモメンタム投資家を惹きつけ、多方面での拡張につながるとみている。
初期の「顧客による積極投資」需要に関しては、マイクロソフト、アマゾン、グーグルなど主要顧客がAIインフラ構築に向けた設備投資を拡大している。WedbushのMatt Bryson氏は、発表済みの大規模支出拡大はAI能力構築に大きく寄与し、最終的にはエヌビディアに流れ込むと指摘する。
また、需要が現実化する側面として、GPU製品がODMメーカーの設計・製造するサーバーに搭載される動きがある。鴻海(Foxconn)などの生産能力や業績拡大は、上流のGPU出荷加速を間接的に裏付ける。
KeyBanc Capital Marketsは、サーバー向け「GB200」ラックの製造歩留まりが85%に達するとみられることから、第4四半期にはラック出荷台数が1.5万~1.7万台に増加し、Blackwell世代の年間出荷は3万台に達し従来予想の2.5万台を上回ると予測している。
Bairdは、7月のGB200出荷が加速しており、このモメンタムは来年にかけて続くと見込む。さらに次世代「GB300」は性能面で大幅な進化が期待されている。
一方でStifelは、ハイパースケーラーによるクラウド投資の持続性、中国市場での供給制約、そしてGB300初期拡販に伴う粗利率の圧力が、エヌビディア成長の「真価」を測るリスク要因になると警告する。
米国の対中輸出規制の枠組みから外れたとはいえ、同社の中国市場はなお不透明感が強い。トランプ前政権下では売上の15%を強制的に吸い上げられる可能性が浮上したほか、中国当局は国内企業に対しエヌビディア製品の使用回避を促している。モルガン・スタンレーは、中国市場の販売見通しが不確実であるため、今回のガイダンスは市場予想より慎重になる可能性が高いと分析する。
それでもBairdやStifelのアナリストは、エヌビディアのAIインフラ分野における支配的地位は「揺るぎない」と強調。Loop Capitalは、AI技術が応用段階における「次の黄金期」に突入しつつあり、エヌビディアが予想を大きく上回る需要の最前線に位置し続けると展望している。
ただし、アナリスト予想全体が「ポジティブ」寄りである一方、日経新聞は専門家の見解を引用し、経営陣が中国関連の不確実性に言及したり予想外に慎重な姿勢を示した場合、市場が売りで反応する可能性を指摘している。
さらに、売上成長の鈍化が予想されることから、投資家がネガティブ材料に過敏に反応するリスクもある。
オプション市場によると、投資家は決算発表日に株価が±6%程度変動する可能性を織り込んでいる。これは過去12四半期における金融機関決算発表時の変動率7.7%、実際の平均変動率7.6%を下回る水準となっている。