TradingKey - 米半導体大手インテル(INTC.US)は、米証券取引委員会(SEC)に提出した8-K報告書において、連邦政府との間で合意した89億ドル規模の株式取引が、同社の事業に複数のリスクをもたらす可能性があると警告した。
合意内容によれば、米政府はインテル株の約9.9%を取得し、同社の主要株主の一角となる。さらに、半導体製造事業が一定の基準を満たさなければ、持株比率は最大15%まで引き上げられる可能性があるという。
インテルは明確に、政府出資が国際ビジネスに不利益を及ぼす恐れを指摘している。同社の2024会計年度における売上高の76%は米国外市場に依存しており、政府関連企業と見なされれば、他国での対外投資審査の強化、規制上の制限、さらには市場からの排除に直面しかねず、グローバル販売に影響が及ぶ可能性がある。また、この取引によって他国からの補助金獲得が阻害されるかどうか、あるいは他国政府が補助金を株式出資に転換する動きに追随するかも不透明だ。
今回の出資資金の内訳は、バイデン政権の「CHIPS・科学法」に基づく未払い補助金からの57億ドルと、「セキュア・エンクレーブ計画」からの32億ドルである。取引はインテルの生産能力再建に対する大きな支援と位置付けられる一方、発行株式の価格は20.47ドルと市場価格から17%超のディスカウントとなり、既存株主に対する希薄化効果が避けられないと同社は認めている。
さらに深刻な懸念はコーポレート・ガバナンスに関わる部分だ。インテルは、規制当局であると同時に株主でもある政府が、立法・規制権限を利用して株主利益に資する取引を制限し、他の株主の議決権影響力を弱める可能性を警告している。
ホワイトハウス当局者は「政府は企業運営に介入しない」と強調しているものの、市場の懐疑は根強い。トランプ前大統領はSNS上で「インテルにおける政府の全株式は米国民の所有だ」と発言し、この取引の強い政治的性格を浮き彫りにした。インテルが今回、自発的にリスクを開示したのは、投資家に対する警鐘であると同時に、国家介入と企業自律性の間で高まる緊張関係を映し出している。