Trevor Hunnicutt
[ワシントン 6日 ロイター] - トランプ米大統領は、イランで撃墜された米軍戦闘機の乗員兵士2人のうち1人が敵地の奥深くに取り残されるという異例の事態に直面し、対イラン戦で危機の瀬戸際に立たされていた。その兵士がイースター(復活祭)の週末に敢行された大胆な救出作戦によって生還したことを、トランプ氏は状況を一変させるチャンスと捉えた。
6日にカメラの前に立ったトランプ氏は、この命がけの作戦を「天の加護に恵まれた軍事的勝利」として語り、まるで映画のワンシーンのような部分をことさらに強調。攻撃開始から5週間を経た今も、有権者の間で非常に不人気なこの戦争を自らが掌握していることを誇示した。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に「われわれには信じられないほど優秀な人材がいる。時が来れば、彼らを無事に帰還させるために、あらゆる手段を尽くす」と強調。「神はわれわれを見守っていた」と語った。
この1週間足らずの間にトランプ氏がイラン問題について国民に直接メッセージを伝える場を設けたのはこれが2度目。自らが「エクゼクティブプロデューサー」兼「広報責任者」として、トランプ流のやり方で自己演出をして見せた。
トランプ氏は、対イラン攻撃に踏み切った妥当性を説明するのに苦慮している。先週のゴールデンタイムのテレビ演説も要点を欠いていた。さらに、復活祭の5日に投稿した罵詈雑言まじりのソーシャルメディアへの激しい投稿は、大統領の発信として常識をさらに大きく逸脱したもので、79歳のトランプ氏の精神状態を巡り記者団から疑問が投げかけられる事態となった。
6日にホワイトハウスで行われた記者会見は、トランプ氏の政治的本能を示す見慣れた光景だった。注目度の高い瞬間を捉え、自分の都合の良いように物語を語り、それをてこに、戦争疲れした国民に団結を呼びかけ、支持を得ようとしたのだ。
<救出劇の詳細>
トランプ氏は、この救出作戦が運にも助けられたと認めつつ、その複雑で緻密な経緯を詳しく語った。通常は政権内部の判断過程について語ることを避けがちな政権関係者も異例なことに、この週末には驚くべき作戦の全容がありありと伝わるよう、記者に詳細な説明を行った。
トランプ氏は、取り残された乗員が負傷して出血しながらも2日間にわたりイラン国内で拘束を逃れ続けた経緯や、捜索救難チームが山岳地帯を登り、ぬかるんだ砂地から航空機を引き上げようと奮闘した様子を語った。敵の手に落ちる可能性のある機材を破壊した場面にも言及した。
「何百人もの人が命を落としたかもしれなかった」と語り、軍幹部の間には作戦に反対する意見もあったと明かした。
トランプ氏は、近くに立っていた米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長に「全部で何人を派遣したのか」と尋ねた。ケイン氏は「それは秘密にしておきたいですね」と回答し、トランプ氏は「秘密にしておこう。ただ、何百人、何百人もの人員だった」と述べた。
会見室は記者で混雑し、通路や出入口に人があふれた。トランプ氏の視界に入りやすい位置を確保しようと、記者の間で言い争いも起きた。
トランプ氏は、軍の卓越した能力を示す、いくつもの詳細な説明に酔いしれている様子だった。同日早くにホワイトハウスで開かれた別の行事では、この救出劇がいつか映画化されるかもしれないと示唆する場面もあった。
その一方、最初に「空軍兵士1人の救出に成功した」と報じ、もう1人の行方不明者が発見される前に情報を伝えた、ある報道機関の記者に対しては、収監すると脅しをかけた。
<同盟国や外交へのいら立ち>
トランプ氏は、戦争終結に向けた外交の進展の遅さや、協力を渋る同盟国への怒り、そして世界のエネルギー供給の要衝であるホルムズ海峡の封鎖へのいら立ちを今回も示した。また、自身の精神状態に関する質問を退け、「批判など気にしない」と一蹴した。
戦争をエスカレートさせるつもりなのか、それとも終わらせるのかとの質問には「言えない」「分からない」と明言を避けた。
1時間以上に及んだ会見の締めくくりに、トランプ氏は勝利がほぼ確実な結果であるかのように印象付けようとした。
「われわれは勝った。いいか? 相手は軍事的に敗北したのだ」